たまりば

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2011年02月08日

日本に必要なのはセンス・オブ・ワンダー

日本に必要なのはセンス・オブ・ワンダー<なぜだろう、なぜかしら、の意気がーー>
自然の摂理に畏敬するこころ、それが逆境にもめげない、自らの生きる道を探せるような感性を生み出す、と聞きます。

そこに、閉塞を脱却するための道がありそうです。

時空の永劫性や人の命のはかなさから関心を背けないこと、が大切ということでしょうか。

<数分で命が消える――>
はかない命といえば、私はやはり脳の重要性を思います。

私達は日々何のことなく、息を吸う → 肺が空気を取り込む → 肺から血液が酸素を取り込む→ 血中のヘモグロビンが酸素と結合して血液に乗って脳まで流れる→脳細胞がヘモグロビンから酸素を捕る、その酸素を使ってブドウ糖を分解してエネルギーを得る→神経細胞が巧みに協働して、意識を保つ、思考を練る、ということが出来ています。

ところが薬物ショックや脳幹部の障害、事故などで心肺停止状態がおきると虚血となり、酸素の供給が絶たれます。

すると脳の機能は3~5分で停止し、神経細胞は死にます。脳死です。

いち早く血流を再開して酸素を供給しなければなりません。

最近はどこでもAED(自動体外式除細動器)の文字を目にします。
音声に従って誰でも出来るようになっていますからイザと言う時は気道の確保、呼吸の確認をして、蘇生率を上げるべく渾身の力が振り絞られるべきです。

<脳の毛細血管>
一刻を争う理由は、脳には,100億以上の神経細胞があり重量は体重の2%ほどですが、その酸素消費量が全身の25%にもおよぶからです。

脳は酸素を一番多く消費する極めて酸素要求性の高い組織なのです。しかも酸素を蓄えておくことができません。

ですから、脳は多くの血液と酸素を間断なく要求するのです。

脳の毛細血管の血流と脳機能は強く関連します。

酸欠になると欠伸のみならず、やる気や根気のエネルギーが失せます。

時に私は、ひと呼吸や飴玉ひとつで脳がクリアーに~。

脳の毛細血管は特別な構造です。血液脳関門という機能があり、神経細胞に必要な物質(栄養)のみを取り込み、不要な物質は取り込まない、体の他の毛細血管とは解剖学的に異なる仕組みが整えられています。それを支えるのは血管内皮細胞同士の密着結合(tight junction)とグリア細胞(アストロサイト)です(図)。
日本に必要なのはセンス・オブ・ワンダー
この血液脳関門の障害には血管性認知症があります。
血液脳関門の機能変化をバイオマーカーによって検出出来るようになることが脳の健康管理に極めて重要です。

<酸素を貯蔵出来る色素蛋白質>
酸素を脳に運ぶのは血液中のヘモグロビンです。

成人のヘモグロビンは、αサブユニットとβサブユニットと呼ばれる2種類のサブユニットそれぞれ2つから構成される四量体構造をしています(図の下)。
それぞれのサブユニットはグロビンと呼ばれる蛋白質部分に補欠分子族である1つのヘムを持ち、ヘムが酸素と結合します(立体構造図)。

すなわち、ヘモグロビンは局所の血中酸素分圧によってヘム部にO2を結合させたり、また蛋白質の末端にCO2を結合したりしてどんな末端にも酸素を供給します。

私達の身体にはこの酸素運搬屋である赤血球のヘモグロビンの他に、肉や魚の赤身などに多いミオグロビンという、酸素を結合できる赤い蛋白質があります。それは唯一酸素を貯蔵できる筋肉の蛋白質です。
ところが最近、脳の神経細胞にもヘムをもつヘモグロビン類似蛋白質が見つかりました(参考文献)。脳神経機能における解明が待たれます。

生死を分かつクリテイカルな5分がたとえ少し延びただけでも、人命救助への恩恵は測り知れません。ですから、脳にも発現し得るこれらの分子を制御できる薬剤が開発されて、緊急時には自分の脳細胞から酸素が供給出来るような仕組みが開発されたら良いと考えます。

<寿命が延びたら認知症が増大してしまった>
脳・心血管系障害による死因がトップになりつつあります。

脳の血管が詰まる ことによって脳梗塞、血管が破れると脳出血、これらの疾患が脳卒中と呼ばれ、神経系が障害されたり認知異常が現れたりします。

血管の障害は加齢や生活習慣の乱れによる動脈硬化が主な原因のようです。

脳・心血管系が異常になると酸素供給が低下して、細胞内でのエネルギー産生が障害され、神経細胞の有用蛋白質の産生低下や異常蛋白質が作られたりしてしまいます。そして神経細胞死が生じてしまうのです。

一旦起こった動脈硬化はもとに戻せません。

正常な老化として血管の動脈硬化は進んでいきますが、できるだけその進行を防ぐ努力が必要ですね。

生命力を下げない、病気になりにくい体にする、そのために若い時から生活習慣をしっかり守り、自分で健康管理を行うこと、が大切です。





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    Posted by 丸山 悦子  at 23:50│Comments(2)長寿健康社会
    この記事へのコメント
    >なぜだろう、なぜかしら

    懐かしい言葉です。小学生くらいの時にこの名前の本がありました
    子供にとってこの「なぜ?」という事はとても大切だと聞いた事があります

    脳梗塞や脳卒中なども医療技術の向上で、生存率はとても上がっているそうです。その反面、手術後も後遺症の肢体麻痺などで悩んでいる方も多いそうです
    そういう方が生活しやすい社会にならないといけないと思います

    また、水痘症などの脳の病気が元で認知症が進むなどもあるそうです
    脳って大切ですよね
    Posted by すももすもも at 2011年02月09日 12:59
    すもも さま

    コメント頂くと、とても嬉しいです。

    なぜか?と問い直す姿勢はコチン頭の大人こそ大切かも!

    脳障害の後遺症は回復不可能といわれてしまうものが多いのでしょう。移植や再生は極めて難しいしーー。

    新しい回路を活性化して機能を戻す苦労に比べれば、日頃の健康管理への努力はたやすい事?口先で言うは易し、ですがーー

    水分調節が障害される、脳卒中で起こる脳浮腫や、脳脊髄液が溜まる水頭症では脳血液関門の水チャンネル蛋白質の異常が示唆されてきました。
    日本の研究者らが上図に示したアストロサイトの足突起にアクアポリン4という水チャンネル蛋白質が沢山発現していることを見出して、脳血液関門のターゲット蛋白質の可能性を報告しました。
    しかし疾患で異常となるか、いまなおコンセンサスが得られないようです。
    神経生化学の難しい仕事がしっかりなされないと治療薬は開発されようがありませんね。
    Posted by まるやま at 2011年02月10日 21:09
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