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2012年05月20日

紫外線がコワ~イ季節です。その理由は

紫外線がコワ~イ季節です。その理由はオゾン層が破壊されて有害紫外線が増大
シミ、シワ、タルミなど肌が一番ダメージを受けて老化が進むのがこの季節です。

特に近年は、自然界にはなかった化学物質のフロン(クロロフルオロカーボン)などによってオゾン(O3)層が破壊されたため(図、左上)、オゾン層による有害紫外線の保護効果が減少してしまいました。
そこで、この有害線暴露による白内障や子供の皮膚がんの増大が心配されています。

紫外線と呼ばれているのは、太陽からの種々の光線のうち可視光線より短い、10-400 nmの波長の電磁波(本ブログ)をいいます。

電磁波のエネルギーは波長が短いほど大きくなります。太陽から大気圏を通過して地上に達して有害となるのは285-400 nmのものです(図、右上)。

エネルギーは強度((図、右)に時間が掛け合わされますので、障害は日照時間や晴天日が多くなる初夏に大きくなる訳です。

ヒトに有害な紫外線であるUV-BとUV-A(図、左)は、むき出しである目や皮膚においてスーパーオキサイドアニオン(・O2-)やハイドロキシラジカル(・OH)などのフリーラジカルを含む活性酸素種を発生させ細胞膜やDNA、コラーゲンなどを損傷します(図、左下)。

すなわち、酸化障害が老化を進めるということになりますね。

フリーラジカルは分子の最外殻軌道に不対電子を持つ分子のことです。他から電子を奪う力が強く、連鎖的な電子の略奪反応が細胞や組織で進んでしまいます。

フリーラジカルの消去法
細胞を障害する体内のフリーラジカルを無害化するために私たちは食品として抗酸化物質を日々摂取します。野菜や果物に豊富なアスコルビン酸(ビタミンC)(本ブログ)、α-トコフェノール(ビタミンE), CoQ10(コエンザイムQ10)(本ブログ)、フラボノイド、ポリフェノールなどですね。

これらの抗酸化物質は、植物が進化の過程において自らの代謝過程で生じた活性酸素に耐えるために合成が可能になった分子です。

植物も私たちも酸素を使って代謝のエネルギーを得るかぎり、死が不可避なように、体内で生じた副産物の活性酸素からも逃れられないのです。

でも動物は、害のある活性酸素を除くためにもっと巧みな仕組みを獲得しました。上記の抗酸化分子では一個が一個をやっつけておしまいです。私たちは酵素というタンパク質による酵素反応のサイクルによる仕組みを獲得しました。

すなわち、酵素を自分の遺伝子で合成して、その酵素反応によって効率よく即座に有害な活性酸素種を消去するのです。

・O2-を酸化してH2O2にするのがスーパーオキサイドディスムテース(SOD)という酵素です。私たちの細胞の内外には幾種類かのSODが存在し、即座に・O2-を捕捉します。

ところが放射能物質から出る電磁波である放射線による被曝では酵素を以ってしても消去が追いつかず発ガンのリスクが一挙に高まってしまいます。

生命力とは、まさにラジカルや活性酸素を消去する力、そして細胞の損傷を修復する力、となりましょうか。そしてあと一つ、免疫細胞が積極的に武器として・O2-を発生させて細菌を殺す防御力、ですね。

最近、抗酸化酵素であるSOD1のアミノ酸が酸化されると筋萎縮性側索硬化症(ALS)(本ブログ)という神経変性疾患を起こす、という新たな視点の論文が報告されました。

ALSの発症メカニズム: SOD1の構造変化がもたらす細胞の生と死・・・・>。
ALSは運動神経が特異的に死んでいき筋肉が動かなくなる病気です(図の右下)。動作だけでなくついには呼吸も出来なくなります。現在は治療法がありません。

ALSを発症した宇宙物理学者であるホーキング博士が車椅子でなお研究発表を続けていた映像が思い出されます

この疾患はほとんどが突発性であり(sALS)、遺伝性のALS(fALS)は10%以下です。

既にfALSの一部の患者でSOD1のアミノ酸変異が生じていることが見つかっていました。がその他の場合ではどういう分子が毒性を生じて運動神経を死なせるのか想像だにありませんでした。

Guareschiらは正常人,sALS, SOD1が変異しているfALSの患者から採取したリンパ母細胞を培養してSOD1について調べました(参考)。

sALS患者の細胞を酸化処理したところfALSの特徴と同じくSOD1の細胞内凝集が見いだされました。

さて、細胞のミトコンドリアには細胞の生死を決定するBcl-2という分子があります。ストレスの状況に応じて幾つかのシグナル分子との結合と解離を介して細胞の死を抑制する重要な分子です。

彼らは、fALSでこのBcl-2と変異SOD1が結合しているのと同じように、酸化修飾を施したsALSのSOD1でもBcl-2が結合していることを見つけました。

すなわちアミノ酸突然変異というSOD1の構造変化がBcl-2との結合を可能としたように、SOD1の酸化による構造変化も同じ分子相互作用の異常を起こして、発症に至らしめたことが考えられます。特に発症の開始時期には酸化処理によらずとも既に酸化修飾がされていてまた凝集も起きていました。
従って、発症の引き金の仕組みとしてSOD1の酸化が提示されるのです。

彼らはSOD1がBcl-2と結合するとBcl-2タンパク質のBH3領域が構造的に表面に露出し細胞死のシグナルとなる可能性を構造特異的に認識する抗体を用いた免疫沈降法によって示しました。

今後、このように酵素の修飾とそれがもたらすパートナーの選択についての詳細は、先端学問であるバイオインフォマティックスの領域でも解明されて欲しいものです。

データでは面白いことに、正常人由来の細胞においては、sALS由来細胞での結果とは異なって、過酸化の状況でもBcl-2とSOD1は結合していない、ということが分かります。
いったい正常人由来細胞では過酸化されてもSOD1がミトコンドリア膜に局在するBcl-2と結合しなかった状況とは何なのでしょうか。

酸化処理によるミトコンドリアの耐久力に関する分子機構の解明、そしてバイオマーカー測定法の確立には特異抗体を用いた微量神経生化学のテクノロジーがまだまだ期待されそうです。




“ドイツあやめ”とも呼ばれ、フランスの国花です。紫外線がコワ~イ季節です。その理由は

花言葉は「あなたをずっと大切にします」です~



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    Posted by 丸山 悦子  at 22:17│Comments(0)脳神経生化学
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