2012年02月25日
ナノテクノロジーはピコテクとなるか
<‘ナノ’は生活必需品>
1ナノメートル(nm)は1メートルの10^(-9) 倍で毛髪(0.1 mm)の10万分の一という長さです。電子顕微鏡の世界です。
ナノの言葉は抗菌グッズから化粧品に至るまですっかり定着しました。
化粧品の何がナノかというと、ナノサイズの酸化金属を加えることで成分を薄く広く皮膚に塗れたり紫外線散乱効果や透明感が得られるようになったそうです。
毛穴も綺麗にする(殺菌?)という‘メイク落とし’にはナノサイズの銀が使われているとのことです。
実はナノテクノロジーは、炭素原子が60個からなる化合物でありほぼ1 nmの大きさのフラーレンや径が1 nmのカーボンナノチューブ(図、中央)の発見がなされて一気に進みました。
その理由はカーボンナノチューブが伝導性が極めて優れている上に、そのしなやかさと強さがずば抜けているので半導体や電池など、あらゆるデヴァイスの素材や微小化に役立つからです。
さらにそれら炭素化合物の表面の自由電子は他分子との結合において今までに無い特徴を表すので、修飾分子によっては生物機能も代替出来るナノロボットが誕生しそうです。
細胞はナノの1000倍の単位であるマイクロの大きさです(図)。細胞内の機能部品を全てカーボンナノチューブに変えると生物ナノマシンです(参考)。
大腸菌(~5 μm)がしっぽ(鞭毛)を振って泳いでいます、と思いきや現れたのは人工大腸菌。カーボンナノチューブの鞭毛がぷりぷり、楽しいビデオです。
これを見て昔日の映画「ミクロの決死圏」を思い出しました。ウエットスーツのカッコいい科学者達がヒトの血管の中を泳ぎます。自分たちの何倍もある赤血球の濁流?に飲み込まれそうになったり、免疫細胞の攻撃から必死に逃げたり、とサスペンスでした。
<カーボンナノチューブのさらなる威力>
一昨日のニュースで日本の建設会社による2050年計画を知りました。
電子顕微鏡の世界から一気に宇宙エレベーターです。
カーボンナノチューブは何よりも強いので地上600万 km迄行くワイアーとして使える、というのです。
現在ある宇宙ステーション「きぼう」が地上400 kmですから夢のようです。ロケットを使わない宇宙旅行が出来るわけです。
でも汚れた地球を見捨てて我先に、と殺到する「蜘蛛の糸」には絶対にしたくありませんね。
目下は、医療ではカーボンナノチューブは心臓ペースメーカーのための体内微小電池や脳波電極など、既存装置の欠点を大きく解消すべく各種センサの開発に寄与しています。
がんのピンポイント治療に向けては体内の患部へ選択的に薬剤を送るドラッグデリバリーシステムにおいて、細胞よりはるかに小さい運搬体の材料としての研究がなされています。
そして上記の人工大腸菌のごとくヒトが遠隔操作できる体内乗り物が出来ると遺伝子(DNA)治療も容易になります。
医療では待ちに待ったナノバイオ時代の到来です。
<健康予防と術後の予後に必要な計測技術>
経年的に自分のサンプルでマーカーを測定してデータを取っていくと健康管理が出来ますね。
しかし体内の疾患マーカーはまだ沢山あるもののそのレベルの低さゆえにほとんどが発見されていない、と考えられます。
微量マーカーを見つけ測定可能とするためにはナノマテリアルや半導体技術などを駆使して、高感度かつ高精度な迅速簡便なナノデヴァイスを創ることが必須です。
極めて低濃度で血中に存在していて既に測定出来ているものに各種のホルモンがあります。
各ホルモンの標的細胞は血液を通して到達したホルモンが標的細胞にある受容体に結合することによって情報が伝達され、その細胞機能が制御されます。
例えば男性ホルモンのテストステロンの血中濃度は~20 nmol/l、唾液では~200 pmol/lの濃度です。ピコはナノの千分の一です。
唾液(本ブログ参考)の100 μl中には約6 pgあることになります。現在では測定に必要な分子の数は百億個以上です。
今では実験室で、マイクロピペットで0.5 μlは日常使う液体の体積です。そして蛋白質やDNAは数ngがゲル電気泳動上で目視出来ます。
さて抗原と抗体分子の結合具合や薬と結合する分子などの分子間相互作用が解析出来る、表面プラズモン共鳴装置という、数千万円もするハイテクの粋を凝らした大型機械があります。
原理は、~20 ngの分子を金属膜チップに固定しておき、そこに加えた他の分子が結合すると当てたレーザー光の屈折率が変化するので結合の相互作用がモニター出来るのです。分子に標識をしておかなくとも情報がとれるのがこの仕組みの利点です。
もし特異的に分子修飾したカーボンナノチューブを使うとそれに結合していた分子の状態が変わることでカーボンナノチューブの電気特性の変化としてモニターすることになります。工夫すれば感度が上がる新たなデヴァイスが出来るかも知れませんね。
ガン検査ではがんマーカーが増大していてその疾患が分かります、が術後は低いレベルの維持を見守らなければなりません。まさかの時の素早い次の手が取れるかどうかで運命が変わるからです。
今よりはるかに感度の良い装置や測定法の開発が必要とされています。
David M.Rissin らは驚くべき測定法を開発しました。
前立腺ガンのマーカーである前立腺ガン抗原(PSA)は根治的前立腺摘所の患者においてはこれまでの測定法では測定出来ませんでした、が彼らの方法によれば血清を用いて9.39-0.014 pg/mlと得られました(See, Fig. 4)。
14 f(フェムト)g/ml即ち~400 a(アト)mol/lという低レベルの患者でも測定出来たのです。
彼らはPSAを補足するビオチン化DNA結合の磁気ビーズと酵素が結合した特異抗体を使いました。そして蛍光分子を標識した基質とその酵素が反応するチェンバーの容量を50 flとすることによってこの快挙を得ました。
血清での濃度が~1 f mol/lという低レベルの前立腺がん抗原は50 flのウエルの中でPSA分子一個が測れていたことになります。
体内微量分子の測定可能濃度はナノからピコ、フェムトmol/lに到達しました。さらに千分の一のアトの世界へは、飽く無き挑戦が導くもの、ナノかもーーー
これも前回ブログの小菊と同じで「ご自由にどうぞ」でした。
花が全くしおれた鉢でしたがみごとに沢山咲きました。
余りに美しかったのでお礼にみかんを持っていきました。
花代より随分と高かったでした・・・・
1ナノメートル(nm)は1メートルの10^(-9) 倍で毛髪(0.1 mm)の10万分の一という長さです。電子顕微鏡の世界です。
ナノの言葉は抗菌グッズから化粧品に至るまですっかり定着しました。
化粧品の何がナノかというと、ナノサイズの酸化金属を加えることで成分を薄く広く皮膚に塗れたり紫外線散乱効果や透明感が得られるようになったそうです。
毛穴も綺麗にする(殺菌?)という‘メイク落とし’にはナノサイズの銀が使われているとのことです。

その理由はカーボンナノチューブが伝導性が極めて優れている上に、そのしなやかさと強さがずば抜けているので半導体や電池など、あらゆるデヴァイスの素材や微小化に役立つからです。
さらにそれら炭素化合物の表面の自由電子は他分子との結合において今までに無い特徴を表すので、修飾分子によっては生物機能も代替出来るナノロボットが誕生しそうです。
細胞はナノの1000倍の単位であるマイクロの大きさです(図)。細胞内の機能部品を全てカーボンナノチューブに変えると生物ナノマシンです(参考)。
大腸菌(~5 μm)がしっぽ(鞭毛)を振って泳いでいます、と思いきや現れたのは人工大腸菌。カーボンナノチューブの鞭毛がぷりぷり、楽しいビデオです。
これを見て昔日の映画「ミクロの決死圏」を思い出しました。ウエットスーツのカッコいい科学者達がヒトの血管の中を泳ぎます。自分たちの何倍もある赤血球の濁流?に飲み込まれそうになったり、免疫細胞の攻撃から必死に逃げたり、とサスペンスでした。
<カーボンナノチューブのさらなる威力>
一昨日のニュースで日本の建設会社による2050年計画を知りました。
電子顕微鏡の世界から一気に宇宙エレベーターです。
カーボンナノチューブは何よりも強いので地上600万 km迄行くワイアーとして使える、というのです。
現在ある宇宙ステーション「きぼう」が地上400 kmですから夢のようです。ロケットを使わない宇宙旅行が出来るわけです。
でも汚れた地球を見捨てて我先に、と殺到する「蜘蛛の糸」には絶対にしたくありませんね。
目下は、医療ではカーボンナノチューブは心臓ペースメーカーのための体内微小電池や脳波電極など、既存装置の欠点を大きく解消すべく各種センサの開発に寄与しています。
がんのピンポイント治療に向けては体内の患部へ選択的に薬剤を送るドラッグデリバリーシステムにおいて、細胞よりはるかに小さい運搬体の材料としての研究がなされています。
そして上記の人工大腸菌のごとくヒトが遠隔操作できる体内乗り物が出来ると遺伝子(DNA)治療も容易になります。
医療では待ちに待ったナノバイオ時代の到来です。
<健康予防と術後の予後に必要な計測技術>
経年的に自分のサンプルでマーカーを測定してデータを取っていくと健康管理が出来ますね。
しかし体内の疾患マーカーはまだ沢山あるもののそのレベルの低さゆえにほとんどが発見されていない、と考えられます。
微量マーカーを見つけ測定可能とするためにはナノマテリアルや半導体技術などを駆使して、高感度かつ高精度な迅速簡便なナノデヴァイスを創ることが必須です。
極めて低濃度で血中に存在していて既に測定出来ているものに各種のホルモンがあります。
各ホルモンの標的細胞は血液を通して到達したホルモンが標的細胞にある受容体に結合することによって情報が伝達され、その細胞機能が制御されます。
例えば男性ホルモンのテストステロンの血中濃度は~20 nmol/l、唾液では~200 pmol/lの濃度です。ピコはナノの千分の一です。
唾液(本ブログ参考)の100 μl中には約6 pgあることになります。現在では測定に必要な分子の数は百億個以上です。
今では実験室で、マイクロピペットで0.5 μlは日常使う液体の体積です。そして蛋白質やDNAは数ngがゲル電気泳動上で目視出来ます。
さて抗原と抗体分子の結合具合や薬と結合する分子などの分子間相互作用が解析出来る、表面プラズモン共鳴装置という、数千万円もするハイテクの粋を凝らした大型機械があります。
原理は、~20 ngの分子を金属膜チップに固定しておき、そこに加えた他の分子が結合すると当てたレーザー光の屈折率が変化するので結合の相互作用がモニター出来るのです。分子に標識をしておかなくとも情報がとれるのがこの仕組みの利点です。
もし特異的に分子修飾したカーボンナノチューブを使うとそれに結合していた分子の状態が変わることでカーボンナノチューブの電気特性の変化としてモニターすることになります。工夫すれば感度が上がる新たなデヴァイスが出来るかも知れませんね。
ガン検査ではがんマーカーが増大していてその疾患が分かります、が術後は低いレベルの維持を見守らなければなりません。まさかの時の素早い次の手が取れるかどうかで運命が変わるからです。
今よりはるかに感度の良い装置や測定法の開発が必要とされています。
David M.Rissin らは驚くべき測定法を開発しました。
前立腺ガンのマーカーである前立腺ガン抗原(PSA)は根治的前立腺摘所の患者においてはこれまでの測定法では測定出来ませんでした、が彼らの方法によれば血清を用いて9.39-0.014 pg/mlと得られました(See, Fig. 4)。
14 f(フェムト)g/ml即ち~400 a(アト)mol/lという低レベルの患者でも測定出来たのです。
彼らはPSAを補足するビオチン化DNA結合の磁気ビーズと酵素が結合した特異抗体を使いました。そして蛍光分子を標識した基質とその酵素が反応するチェンバーの容量を50 flとすることによってこの快挙を得ました。
血清での濃度が~1 f mol/lという低レベルの前立腺がん抗原は50 flのウエルの中でPSA分子一個が測れていたことになります。
体内微量分子の測定可能濃度はナノからピコ、フェムトmol/lに到達しました。さらに千分の一のアトの世界へは、飽く無き挑戦が導くもの、ナノかもーーー

花が全くしおれた鉢でしたがみごとに沢山咲きました。
余りに美しかったのでお礼にみかんを持っていきました。
花代より随分と高かったでした・・・・