2013年01月19日
ビバ、オイルの時代

遂に、世界(米国?)はシェールオイルの実用化に成功しコスト面で石油を超えられそうだ、と湧いています。
石油(原油)は油田から汲み出しています。今後は鉱床の岩石から水や混合物からオイルを分離することによっても石油が得られるのです。
オイリーな肌、ノンオイルドレッシング、あぶらを売る、水と油の仲、そして醤油にも油の字が・・これは当て字?
はたまた最近では、‘揚げ物は健康に悪い’などと油は生活に密着してきています。
石油の油はといいますと食品の油とは全く異にする高エネルギー天然資源物であり経済活動の基盤となる物質です。
石油は地球の奥深いところで高圧高温によってできた過去の動植物などに由来する炭化水素化合物です。
一方、油脂は脂肪で、脂肪酸とグリセロールのエステル化合物なのです(図、左下)。
<油の分子構造>
私たちは常温で液体の脂肪(図、左の中央)を油といい、その脂肪酸は不飽和脂肪酸(アルキル基の炭素間に一つ以上の二重結合を持つ)であり、一方、常温で固体の脂肪を脂といい飽和脂肪酸からできます。
石油も油脂(脂肪)も水に溶けないことを特徴とし、それは極性が極めて高い水分子同士がつくる水素結合に切って割り込むことが出来ないためです(図、左上)。
また脂肪(油脂)も石油も酸素を使ってエネルギー源となります。
体内では私たちは食事から得た脂肪や蛋白質、炭水化物からATPを作って活動のエネルギーを得ます。
脂肪の分解によって出来る脂肪酸は各細胞のミトコンドリアに運ばれてATP産生(本ブログ )に役立ちます(図、右中)。
ですから、つまめば電話帳~、という私のお腹の脂肪は冬山で遭難の時にはきっと役立つはず、と思いきや・・・ナント
<不健康の原因は脂肪細胞に有り>
生活習慣病やアルツハイマー病が増加している原因として、高齢化と食事の欧米化が挙げられています。
カロリーの取り過ぎ、運動不足による脂肪の異常蓄積は脂肪細胞の代謝を害して癌やアレルギー疾患、血管の脆弱化、糖尿病をひきおこします。
脂肪細胞が脂肪の貯蔵だけではなく健康維持のための多くの分子を産生して分泌しているからです(図、右上)。
その中のレプチン(通常はホモトリマー)は血中を経て脳の視床下部のレプチン受容体に情報を与え食欲の制御を行います。ですから脂肪細胞が‘調子狂えば’当然ながら・・・
肥満が生活習慣病の元凶となるわけですね。
現代人の食生活は、魚に豊富なオメガ3系の脂肪酸、特に必須脂肪酸であるα―リノレン酸の摂取比率が低下しているそうです。肉食だと油でなく脂やコレステロールを多く摂る事となってしまい動脈硬化が起きやすくなります。
体内では多種多様の生理活性脂質が脂肪酸から生成されて細胞の健全性を維持しているので食事から得る脂肪酸の種類は極めて重要です。
体内で合成できないために摂取しないといけない脂肪酸である必須脂肪酸にリノール酸とα―リノレン酸があり、それぞれ18:2(n-6),18:3(n-3)と記します。炭素数が18でカルボキシル基(-COOH)と反対側(オメガ)のCH3からそれぞれ6,3番目のCに二重結合を2,3個持つ脂肪酸となります。αはその異性体の中で最初に同定されたリノレン酸であることを意味します(図の右下)。
体内でα―リノレン酸からできるものに脳細胞を作り充実させるのに欠かせないEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)があり、それらはオメガ3系不飽和脂肪酸です。
脂肪酸が健康や発達にどう影響するか、多くの研究がなされてきました。
母親が、オメガ3系の脂肪酸に富む魚や魚油の摂取が低下していると産後うつや胎児や新生児の脳神経の発達が影響されると報告されました(参考)。食物中のα―リノレン酸の量が重要ですね。
<脳ミソはあぶらっこ~い>
脳ではその構成成分の60%が脂肪酸を成分とする脂質が占めています。
記憶や学習を司どる神経シナプスによる情報の伝達では脂質の種類に影響される、細胞膜の流動性や膜内に内在する受容体の環境がとても重要です。
オメガ3系脂肪酸の認知機能における役割が動物やヒトで研究され、最近、高齢者のうつ発症(本ブログ)による認知機能と赤血球膜のオメガ3系脂肪酸のレベルが相関することがガスクロマトによる測定でわかりました。血液の血漿レベルには変化がでませんでした(参考)。
今後、このことがうつ病の検査として利用されたり、食事の摂取状況が分子レベルでモニターできたりすると生活習慣病が予防され素晴らしいことです。
α―リノレン酸はキャノラー油(菜種油の一種)や大豆油に、肉類ではマトンやラムに、魚では鮎やアンコウの肝に多いそうです。お刺身が良いですね(きっと不飽和脂肪酸の酸化率が少ない)。
どの位の量を、どういう時期に摂るべきか、どうすれば治療に使えるか、課題は手にありあまります。
脂肪酸代謝を繰る酵素の生化学や未知の生理活性分子の発見と機能同定が欠かせません。
そして測定法の簡便化や個人レベルのデータベース化が必須となりそうです。

Posted by 丸山 悦子 at 23:40│Comments(0)
│長寿健康社会