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2013年03月27日

免疫力がヒトの生・死を決める

免疫力がヒトの生・死を決める<生き存えるべきか、さもなくば死すべきか、それが問題なのだ・・・>
“To be or not to be,that is the question”は シェークスピアの悲劇 ‘ハムレット’の余りにも有名な台詞です。
生死の選択の苦渋に喘ぐハムレット、そこには強い意志が感じられます。

私たちはといえば意志とは裏腹に、複雑社会がもたらすストレスによる免疫力の低下によって生死が決定されてしまう、という悲劇の主人公にも思えます・・・


免疫力は治癒力ともいわれます。

健康は、血液に乗って体中を巡っている免疫細胞のさじ加減ひとつ?によるわけですね(図、左)。

ではその免疫細胞の具合を探って健康の指標を得ることは出来ないものでしょうか。

廣川勝昱先生は血中の免疫細胞の数と機能、比率をスコア化して健康状態が評価できることを発明されてベンチャーを立ち上げました(参考)。

<免疫細胞は健康の見張り役>
免疫システムは、生物が数十億年かけて生き残りを懸けて培ってきた、免疫細胞たちの複雑精緻な連携による、疾病から身を守る防御の仕組みにほかありません。

免疫細胞にはウイルスに感染した細胞を殺すキラーT細胞や癌細胞を退治するナチュラルキラー細胞などがあり常にパトロールしています(図、左中央)。ですから不摂生などして活性酸素の増大やストレスに曝されるとパトロール能力が低下して、細胞を元気にする生理活性因子が出せなくなり、発症を抑え切れなくなるのです。

さらには血液中のリンパ細胞が減少して免疫抑制に傾いてしまうと次の進入に備えられる抗体の産生が出来なくなってしまいます。

病原菌に一度かかると二度とかからない仕組みは獲得免疫といいます。B細胞が感染を記憶していて二度目に感染するとすぐさま大量の特異抗体を産生して無毒化するのです(図、中央)。

当然ながらその抗体産生能力が発揮できなかったら、炎症が進み、異常細胞が増え、生活習慣病やアルツハイマー病、癌などが進んでしまいます。

がっちりとスクラムを組んでいるような免疫細胞ですがこれだけに注意を注いでいれば安心でしょうか。

私は、その監視の網の目をくぐってしまった?生体の異常を何とか早期にキャッチ出来ないものかと考えます。

<認知症の予防、早期発見、治療への道>
高齢化社会を迎えて、認知機能が低下し生活の質が低下してしまった方がとても増えています。癌人口も増大です。

疾患の予防はもちろん早期発見をそして治療の経過をきちんとモニターすることが重要です。

いくらゲノム解析がベッドサイド化されてもダメです。生まれ持った個々の遺伝子ではなく遺伝子の発現物である蛋白質が刻々とストレスや他の分子の影響を受けて変わっていくのですから。

まず疾患特異的バイオマーカーの発見が必須です。さらに特異的な超微量測定法を確立しなければなりません(本ブログ)。

その戦略のひとつに、上にあげた、自己以外を認識する抗体の利用があります。

免疫機構の進化の産物である、哺乳類の特異抗体を作る能力とその抗原との結合力の強さを鑑みて、抗体を疾患特異試薬として利用するのです。

しかし私達の抗体の基本構造(図、右上)は、その分子量の大きいことや抗原認識の複雑さ(重鎖と軽鎖の二本づつからなっている)のために抗体エンジニアリングを行って試薬とするには容易ではありません。

ところがです!何とラクダだけは違ったのです。

ラクダのリンパ球は軽鎖のない免疫グロブリンも作っていたのです(図、右上、中央)。しかも単鎖の可変領域(VHH)だけでも抗原認識力が十分あったのです。

いざ、抗体工学で出陣です!

標的分子が免疫されたラクダリンパ球から得た抗体遺伝子をファージ(大腸菌のウイルス)に発現させてバイオパニング法でスクリーニングします。
ナノボデイと呼ばれる単鎖抗体が得られるようになりました(図、右下)。

ラクダのおかげで楽だったのです~

すでにいくつかのナノボデイが大腸菌をファージの宿主としてクローニングされました。

<抗体エンジニアリングによる抗体医薬の開発>
プロテインカイネースC エプシロン(PKCε)は脳の学習と記憶の場であるシナプスの形成に重要な蛋白質燐酸化酵素です。

シナプスが壊れ、Aβが蓄積していくアルツハイマー病でこの酵素の活性の変化が関与していることがわかってきました(参考)。

その酵素活性を制御できる試薬が作れれば認知力が回復するはずです。

ヒトPKCε組み替え蛋白質で免疫したラクダ科のリャマから取れたナノボディのクローンはヒト特異的で、いくつかはPKCεの触媒部位を認識し、その中には酵素活性を活性化するものと抑制するものがありました(参考)。

これらラクダ単鎖抗体は15~12kDと極めて小さく、血液脳関門(本ブログ) を通過出来るだけでなく細胞内に入れることも可能と考えられ、神経変性疾患の医薬品としての期待が一挙に高まっています。

今後、産官学などの連携による力で、ラクダ抗体やナノボディを用いた疾患医薬や分析技術が大きく発展するに違いありません。


免疫力がヒトの生・死を決める"ミモザアカシア"
木々の景色はまだ冬という二月に、いち早く咲き始めます。

まさに春告げの樹です。

今は桜にバトンタッチしました。




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