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Posted by たまりば運営事務局 at

2013年02月22日

男・女の脳の違いは~

<ボクは、教わらないことが出来たョ>
エスカレーターで2歳くらいの男児が足を出せないで困っています。赤ちゃんを抱きかかえたお母さんはもう下についてしまいました。心配そうに見上げています。

女の子なら、私なら、お母さんに逆に上がってくるようにわめくか、パニくるかでしょう。

彼はじっと足元の動きをみつめています。しかしどうしたって、一歩が出ません。

私が抱えないとダメかな、と思いながら近づいたとき、そのとき、

彼の脳はひとの気配を後ろに感じて猛烈にフル回転、その一瞬、身体と協調した神経回路によって思わぬ行動決起が!!!

ストン、と足を前に出して座ったのです。まさに思考を超えたとっさのひらめきの動作でした。

すると次は自ずと足が折れて、まさに椅子にお座りとなりました。私は思わず、アッタマ、イイ!と拍手喝采しそうになってしまいました。

動く椅子は、それはそれは気持ち良さそうです。さりとて、来なくても良いのに終点は刻々と近づいてきます。

のんびりしている場合ではありませんョ!

つんのめるのかな、大怪我にはならないだろうな、でも泣くだろうな、などいろいろと脳内をグルグル。

私は先端を指差して「Watch!」と坊やに囁きました。その子はどうしたと思います?

スっと立ち上がって、先端を凝視したかと思うとその子はポーンと前に跳んだのです。

バシッ、両足着地に成功、やった~。

快楽の神経伝達分子であるドパミンが彼の脳に溢れました、全身が満身?の笑みです。

新たな成功体験の神経回路が彼の脳に刻まれました。

お母さんが「良かったね」「ありがとうございました」と言って赤チャンは片手にして坊やと手をつないで去っていきました。

私は彼の着地点をみて、小さいのに随分遠くまで跳べたなあと思ったのでした。

ニュートンによる慣性系の運動の法則によれば垂直に飛び上がるだけでよかったのかも・・(図、左上②)。
エスカレーターの分速を毎分30mとすると垂直に0.5~1秒間飛び上がっていれば自ずと25~50cm先に着地出来るはず・・・・
思う以上に遠くに着地出来たわけも(①)、後ろに身体が残る下りエスカレーターの怖さも慣性の原理によるのですね。

それにしても、教わったことさえも思うようにならないのが脳です。

初めてなのに、計算尽くされたかのように行動がとれた彼の脳にどのような仕組みがあったのでしょうか、いったいその場所はどこなのでしょう。

<運動の開始と終了をプランニングする脳>
ヒトがほかの動物と違うところは大脳の発達であり、特に大脳新皮質の前頭前野が理性と高度な認知力を司るヒトの人間たるところ、と教わりました。

男女の脳については、ものごころがついたときから女の子はお人形の着せ替え、男の子は動くもので遊ぶ、という違いがあるそうです。

坊やの行動は、身体座標を繰る潜在能力というのでしょうか、その無意識の咄嗟の身体判断には今までのいろいろな遊び体験が活用されたのに違いありません。

ところで宇宙に行ける時代になったのにヒトの高次機能の脳地図も男女の脳における構造の違いも未知です。

近年、サルの実験などにより、頭頂葉(図、左下)が空間感覚と視覚情報を統合して指示決定をして、運動経験から無意識の行動が取れるようにする部位、と考えられるようになりました。
そこにはミラーニューロン(本ブログ)もあるともいわれ、その訓練や発達によってひらめきの動作が磨かれるようです。

坊やの脳はその辺がきっと鍛えられていたのでしょう。

実は、最近アインシュタインもこの頭頂葉が他の人より発達していたことがわかりました。

アインシュタインが1955年に亡くなった時の脳の新たな写真が見つかったのです。シワが深く広がっているという特徴が前頭前野と頭頂葉の後方に位置する下頭頂小葉で明らかだったのです(参考)。

そこは思考実験のモデル化や文の意味の理解、数学や空間予測に関する認知に関する部位と考えられています。

天才の中の天才と言われるアインシュタインの脳におけるこの新知見は、まさにFalk博士の眼力という人間ワザの賜物です。

そういえばあの坊やの顔はどんなだったかな、こんなだったかな~

<浦島太郎を説明するアインシュタイン>
浦島太郎が歳をとらなかったのはどうしてだったのでしょう。どのような乗り物で竜宮城に行ったのでしょう。
アインシュタインは、静止系と運動系の座標系において光速度不変を認めるなら(図、右上: A,Bが同時に光を発してBは速度vで移動するが速度が変わらない光をB‘で見ることが出来る)、時間が変わると考えたらつじつまが合う、とひらめきました。一般相対性理論です。

では浦島太郎はどの位の速度で竜宮城に行ったのでしょう。エクセルで簡単に計算できます。

もし光速(30万km/sec)の0.999倍で行ったとすると浦島太郎の一年は、待っていたひとの二十二年となります(図、右下)。
いったい、この光速の0.999倍は可能なのでしょうか。現在では最も早い探査機(~15km/sec)でも光速のたったの20000分の1のくらいのようです。計算結果からは(表のセルのC4)時間の遅れはなきに等しいです。
有人ロケットの速度はさらにずっと遅いので時間の変化は極めて小さいものとなり、ニュートン力学の世界で済みそうです。
量子の世界となるとアインシュタインの理論を越えた理論が必要かもしれません。

<オバマ大統領の‘脳地図’プロジェクト>
宇宙開発の次は脳開発?です!!
先日オバマ大統領が宇宙開発競争に匹敵すべく「脳の活動地図」の研究に投資したい旨の政策内容のニュースが報じられました。

その案は10年計画で30億ドルです。

どのような思いもよらぬことが出てくるかと今からワクワクです。

構造よりは分子マップによる脳情報の変化が時空間的に得られるかもしれません。

そして自分の脳地図を画き替え、修正もできるようになりましょうか・・・・・

やはり、脳障害者の治療や適切なリハビリの方法、そして脳の仕組みを利用した自律型ロボットの研究開発が進んで欲しいですね。


“胡蝶の舞”

新年になると庭先では“胡蝶の舞”の先端がほんのりしてきます。

グラスに挿しておくと根がモジャモジャ出てきて何ヶ月もピンク色の葉を愛でることが出来ます。
  

  • Posted by 丸山 悦子  at 22:19Comments(1)長寿健康社会

    2013年01月19日

    ビバ、オイルの時代

    <油とは・・・>
    遂に、世界(米国?)はシェールオイルの実用化に成功しコスト面で石油を超えられそうだ、と湧いています。
    石油(原油)は油田から汲み出しています。今後は鉱床の岩石から水や混合物からオイルを分離することによっても石油が得られるのです。

    オイリーな肌、ノンオイルドレッシング、あぶらを売る、水と油の仲、そして醤油にも油の字が・・これは当て字?
    はたまた最近では、‘揚げ物は健康に悪い’などと油は生活に密着してきています。

    石油の油はといいますと食品の油とは全く異にする高エネルギー天然資源物であり経済活動の基盤となる物質です。

    石油は地球の奥深いところで高圧高温によってできた過去の動植物などに由来する炭化水素化合物です。

    一方、油脂は脂肪で、脂肪酸とグリセロールのエステル化合物なのです(図、左下)。

    <油の分子構造>
    私たちは常温で液体の脂肪(図、左の中央)を油といい、その脂肪酸は不飽和脂肪酸(アルキル基の炭素間に一つ以上の二重結合を持つ)であり、一方、常温で固体の脂肪を脂といい飽和脂肪酸からできます。

    石油も油脂(脂肪)も水に溶けないことを特徴とし、それは極性が極めて高い水分子同士がつくる水素結合に切って割り込むことが出来ないためです(図、左上)。

    また脂肪(油脂)も石油も酸素を使ってエネルギー源となります。

    体内では私たちは食事から得た脂肪や蛋白質、炭水化物からATPを作って活動のエネルギーを得ます。
    脂肪の分解によって出来る脂肪酸は各細胞のミトコンドリアに運ばれてATP産生(本ブログ )に役立ちます(図、右中)。

    ですから、つまめば電話帳~、という私のお腹の脂肪は冬山で遭難の時にはきっと役立つはず、と思いきや・・・ナント

    <不健康の原因は脂肪細胞に有り>
    生活習慣病やアルツハイマー病が増加している原因として、高齢化と食事の欧米化が挙げられています。

    カロリーの取り過ぎ、運動不足による脂肪の異常蓄積は脂肪細胞の代謝を害して癌やアレルギー疾患、血管の脆弱化、糖尿病をひきおこします。
    脂肪細胞が脂肪の貯蔵だけではなく健康維持のための多くの分子を産生して分泌しているからです(図、右上)。

    その中のレプチン(通常はホモトリマー)は血中を経て脳の視床下部のレプチン受容体に情報を与え食欲の制御を行います。ですから脂肪細胞が‘調子狂えば’当然ながら・・・

    肥満が生活習慣病の元凶となるわけですね。

    現代人の食生活は、魚に豊富なオメガ3系の脂肪酸、特に必須脂肪酸であるα―リノレン酸の摂取比率が低下しているそうです。肉食だと油でなく脂やコレステロールを多く摂る事となってしまい動脈硬化が起きやすくなります。

    体内では多種多様の生理活性脂質が脂肪酸から生成されて細胞の健全性を維持しているので食事から得る脂肪酸の種類は極めて重要です。

    体内で合成できないために摂取しないといけない脂肪酸である必須脂肪酸にリノール酸とα―リノレン酸があり、それぞれ18:2(n-6),18:3(n-3)と記します。炭素数が18でカルボキシル基(-COOH)と反対側(オメガ)のCH3からそれぞれ6,3番目のCに二重結合を2,3個持つ脂肪酸となります。αはその異性体の中で最初に同定されたリノレン酸であることを意味します(図の右下)。

    体内でα―リノレン酸からできるものに脳細胞を作り充実させるのに欠かせないEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)があり、それらはオメガ3系不飽和脂肪酸です。

    脂肪酸が健康や発達にどう影響するか、多くの研究がなされてきました。
    母親が、オメガ3系の脂肪酸に富む魚や魚油の摂取が低下していると産後うつや胎児や新生児の脳神経の発達が影響されると報告されました(参考)。食物中のα―リノレン酸の量が重要ですね。

    <脳ミソはあぶらっこ~い>
    脳ではその構成成分の60%が脂肪酸を成分とする脂質が占めています。

    記憶や学習を司どる神経シナプスによる情報の伝達では脂質の種類に影響される、細胞膜の流動性や膜内に内在する受容体の環境がとても重要です。

    オメガ3系脂肪酸の認知機能における役割が動物やヒトで研究され、最近、高齢者のうつ発症(本ブログ)による認知機能と赤血球膜のオメガ3系脂肪酸のレベルが相関することがガスクロマトによる測定でわかりました。血液の血漿レベルには変化がでませんでした(参考)。

    今後、このことがうつ病の検査として利用されたり、食事の摂取状況が分子レベルでモニターできたりすると生活習慣病が予防され素晴らしいことです。

    α―リノレン酸はキャノラー油(菜種油の一種)や大豆油に、肉類ではマトンやラムに、魚では鮎やアンコウの肝に多いそうです。お刺身が良いですね(きっと不飽和脂肪酸の酸化率が少ない)。

    どの位の量を、どういう時期に摂るべきか、どうすれば治療に使えるか、課題は手にありあまります。

    脂肪酸代謝を繰る酵素の生化学や未知の生理活性分子の発見と機能同定が欠かせません。

    そして測定法の簡便化や個人レベルのデータベース化が必須となりそうです。
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 23:40Comments(0)長寿健康社会

    2012年08月15日

    モバイルDNAで遺伝子治療をする

    <ジャンク(がらくた)遺伝子はジャンクでなかった!>
    モバイルphoneよりずっと大切なのがモバイルDNAです~

    私たちの身体を作っているのは主に蛋白質です。その蛋白質をコードしないDNA配列は、いわゆるジャンク遺伝子といわれます。哺乳類ではゲノムの~97%も占めています。大腸菌では10%くらい。

    注目すべきはそのジャンク遺伝子が脳において‘動く遺伝子’として沢山複製されていたことです。

    どうやら私たちはジャンク遺伝子を使って進化の過程で環境に適応すべく高次機能を持つ脳を獲得したり、さらにまた個性発現のための多様な神経細胞を作るためにこの非コード化遺伝子を移動させたり増やしたりして利用してきた、ようなのです(参考)。

    双子が成育環境によって違ってくる理由も‘動く遺伝子’で説明されるかもしれません(図、左下)。

    なぜなら運動や勉強が‘動く遺伝子’の活動を刺激して、脳内ネットワークの構築が変わることがあり得るからです。

    この動くDNAはゲノムへの挿入の仕方によってトランスポゾンとレトロトランスポゾンに分けられます。

    トランスポゾンはいわゆるカット&ペーストをして他の場所に挿入されるのに対して、レトロトランスポゾンはコピー&ペースト型の複製をします(図、右上)。

    この挿入を見てウイルスみたい、と思った方もおられますね。そうです、RNA型ウイルスはレトロウイルスといって逆転写酵素を持っていてRNAからDNAにしてから宿主のゲノムDNAに入り込みます。

    もしかしてウイルスは動く遺伝子がゲノムからちょん切れて細胞外に出てきたの?

    私のゲノムはウイルスと共生しているの?

    はたまた私の脳はウイルスに乗っ取られているの?・・・・やっぱり・・

    ところで、この‘動く遺伝子’を染色法による顕微鏡観察によって、はるか半世紀以上も前に見つけた人がいます。マクリントック(1902-1992,米国)です。

    <マクリントックによるトランスポゾンの発見>
    とうもろこしの美味しい季節となりました。

    日本のコーンは淡黄色一色なので遺伝のことなど考える間もなくお腹の中です。しかし装飾用として見かけるインディアンコーン(図、左上)の斑入り模様には誰でも一度は「なぜだろう」と思ったに違いありません。
    これを見て、マクリントックは研究をはじめたのです。

    そして遂に、色素の遺伝子の発現を調節する調節遺伝子が動き回るから、図、左上のように種の色の多様性が出るのだ、と考え至ったのです。

    しかしその頃世界は、DNAからRNAそして蛋白質、というセントラルドグマ一色でしたからマクリントックが「遺伝子が動く」と主張しても誰も振り向こうとはしなかったのでした。

    この画期的な生物学的研究結果は時がはるか過ぎてから認められました。

    彼女が81歳のときでした。

    彼女はノーベル生理医学賞の受賞の報告を得て「あらまっ」と一言つぶやいていつもの様にトウモロコシ畑にスタスターー、という話は有名です。

    <動く遺伝子と疾患>
    ‘動く遺伝子’は脳の機能だけに目を向けていてはいけませんね。

    癌の発生や難病の原因は過度に偏った生活習慣やストレスによる、‘動く遺伝子’の制御逸脱による、と考えられるからです。

    生活習慣病や癌、精神疾患など多くの病気がひとそれぞれで多種多様に活動する‘動く遺伝子’に原因がある、となると治療が混迷する訳も納得です。

    早くトランスポゾンやレトロトランスポゾンの位置がコンピューター化されたマッピングによって個人の診断情報として使えると良いですね。
    まさに目指すべく個別化医療の為せる業となりましょうか。

    疾患と遺伝子変異については、既に原因として単一塩基多型(SNP)(本ブログ)という個人ごとの変異によってある種の癌や神経変性疾患が生じることが分かっていて解析が可能です。

    レトロトランスポゾンによる疾患も見つかり、その中に2.6kbのSVA型レトロトランスポゾンが挿入している福山型筋ジストロフィーがあります。

    この遺伝病は日本人特有で二万人に一人と発症率が高く、十代で死に至ります。
    常染色体劣性遺伝性神経疾患であり、異常遺伝子をヘテロに持つ発病しない保因者の方は八十八人に一人という高頻度とのことです。

    発症のメカニズムはレトロトランスポゾンが筋肉機能に大切な糖転移酵素の遺伝子に入り込んでしまい異常な糖タンパク質が出来てしまうことによります。

    ゲノムプロジェクトの成果として今やSNP解析も巨大な遺伝子の配列決定も夢のように迅速簡便となりました。
    今後は、疾患の原因遺伝子は何か、トランスポゾンの挿入サイトはどこなのか、発現や構造にどのような異常が生じたか、どういう関連蛋白質が影響されているのか、などのよりシステマティックな研究が切望されます。

    重篤な遺伝子異常疾患の治療には早急に、外部から新たな原因遺伝子を補充するか、正常に発現している細胞を移植しなければなりません。幹細胞を使った再生医療の技術が世界中で切磋琢磨されています。

    <遺伝子の導入にはトランスポゾンを含むヴェクターのデザインから>
    最初の遺伝子導入の試みはウイルスを用いるものでした、しかし毒性が強すぎました。

    細胞に余計なDNA配列が入ったことによる癌化のリスクを無くすべくトランスポゾンを使った技術開発が始まりました。
    動く遺伝子の仕組みを応用して、転移に必要なトランスポゼースとそのヘルパータンパク質を発現するベクターからなる共導入システムにすればウイルスやプラスミドだけをヴェクターとするより安定で効率が良いことがわかりました(図、右下)(参考)。

    既に哺乳類への適用としてSleeping Beauty, piggyBac、Tol2の非ウイルス性ヴェクターが 開発されています。
    これらは再生医療で重要な人工多能性幹細胞(iPS細胞)における分化決定因子の強制発現にも有用でした。
    と、こんなに進んだものの未だ、外来遺伝子を身体の標的場所に、また細胞のゲノムの適切な位置に挿入するのは至難なのです。

    さらにまた大きな問題が分かってきました。

    DNAの塩基配列だけの情報で遺伝子を動かすことは出来ない、すなわち動く遺伝子の活動を繰る要因が別にあったのです。
    それはまさに遺伝子では決められていない、DNAのメチル化やヒストンの修飾なのです。

    この現象はエピジェネティックといい、遺伝情報は変化しないが何らかの刺激によってDNAへの化学修飾(DNAのメチル化やヒストンの修飾など)が起きて、そのために特定蛋白質への読み取りの増減や動く遺伝子の活動の抑制度が左右されるのです。

    従って、治療や予防のために、後天的に起きる遺伝子の活性制御を解析するエピジェネティックス(本ブログ)の学問にブレークスルーが強く求められるのです。



    きゅうりのグリーンカーテンです。

    あっという間に30cmにもなり、

    美味しいきゅうりが食べられます。



      

  • Posted by 丸山 悦子  at 21:47Comments(1)長寿健康社会

    2012年04月29日

    仙台しだれ桜、風情いろいろ



    どうぞクリックしてご覧ください。
    可憐で優しくも凛として、鎮魂のうたが聞こえそうです。







    ドイツ国営放送で製作された記録映画「福島の嘘」のURLをお友達から頂きました。
    「福島の嘘」
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 20:08Comments(2)長寿健康社会

    2012年03月18日

    有性生殖は超えられるのか

    <春遠からじ・・・>
    今年は100年来の厳冬とのこと、鳥たちはいつになく餌探しに必死です。
    赤い実は、千両も万両も黒鉄モチももう食べ尽くされました。

    見慣れぬキジバトのカップル(写真)も枯れた芝生に何があるのか忙しくつっついています。

    この黒鉄もちの木(写真)は小さいときから秋になると実を沢山つけます。

    黒鉄もちは雌雄異株とのことです。さらに驚くことに単為結実性といって受粉しなくとも実がなるのだそうです。
    メスだけの世界なのですね~

    受粉無し、ということですから種がない、鳥が食べて運んでくれても遺伝的多様性が得られません!!

    植物ではこの単為結実性が強いものが茄子やきゅうり、みかんや種無し葡萄、柿、と野菜や果物に多いですね。生殖兼備?の多才が羨ましい・・・・

    この単為結実性は食べるときに種を出さないで済みますので人間には好都合のことです。

    人間が毎年同じ味の美味しいミカンやオレンジを食べ続けて来られたその仕組みは、接ぎ木とその寿命の長さ、そしてどうやら、受粉して種が出来た場合でも、その胚の中に母親と全く同じ遺伝子を持った胚も出来てそれが育っていくことによるようです。元親と全く同じ遺伝子の子供なので同じくまた美味しいミカンが付くのですね。

    動物の胚からも雌が単独で子供を作れるでしょうか?

    マリアさまだけには進化(本ブログ)が微笑んだのでしょうか!!

    <哺乳類は単為生殖が出来るか>
    有性生殖をする私たちは体細胞の核内には母由来と父由来の2対の染色体(22対と性染色体XXかXY)を持ちます。
    生きていく上で必要な分子を得るために、決まったaかA(図、左上)の遺伝子からタンパク質を合成していくのです。
    ひとつの細胞では遺伝子が分裂するごとに生涯同じ親由来遺伝子が発現するように胚形成の初期にマークされるのです。

    ところが染色体のある場所では(図の×と○、◎)、母由来で決まって発現する遺伝子(○)が、または父由来でしか発現しない遺伝子(◎)があり、前もって決まっていて世代で変わりません。まるで刷り込まれているようなのでこの仕組みをゲノムインプリングといいます。

    インプリングされている遺伝子は現在100個以上わかってきました。それらの遺伝子は受精卵の発達に重要な分子を合成する情報をもっているので父由来もしくは母由来だけということになると発生が出来なくなるのです。
    まさに有性生殖の妙味です。

    ではどのようにしてDNAは刷り込み、という特定の機能を持つのでしょうか。
    それは、DNAはアデニン(A),チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という塩基の連なり具合によって遺伝情報を表すことが出来るのですが、刷り込み機構ではシトシンをメチル化という化学修飾をすることによって対の遺伝子とは違う読み取りをおこすのです(図の右上)。

    DNAだけでなくDNAが巻きついているヒストン蛋白質の修飾やRNAもインプリンテイング機構に関与しているかもしれません。

    哺乳類のみが持つインプリンテイング機構の詳細はエピジェネティクスという発生学の新規領域で解明が期待されています。

    ではいったい、どの遺伝子修飾がどう必須なのかまったく未知の段階なのに世界をアッと言わせた羊の体細胞クローンであるドリーちゃんはどうやって生まれたのでしょうか。

    <体細胞クローンペット産業の失敗>
    体細胞の遺伝子は受精卵から卵割していきそれぞれの組織へと分化するために各卵割細胞の遺伝子が独特に修飾されていきます。そこでドリー誕生では体細胞を初期化という操作をして修飾をはずして分化する前のパターンに近付けたのでした(図の右下)。当然ながらインプリンテイング領域の修飾は常に変わりません(図の左下)。

    元の動物(ドリーの母)と全く同じ遺伝子を持って生まれたドリーの出生は、偶然を越えた快挙とも思えるほどに成功率が低い再現性の難しい実験のようです。彼らの初期化の方法では、多数の遺伝子のメチル化や脱メチル化、シス、トランスに働くであろう因子などが必要と思われるそのメカニズムのコントロールは至難の業と思われるからです。

    私は二匹をまじと見つめて顔を比較してしまうのでした、どのくらい双子なの?

    と申しますのはその後に活発化した体細胞クローンペット産業で猫や犬が思ったようには元の動物と同じにならなかったからです。毛の色や模様そして性格や記憶力などはストレスや環境などの後天的な影響で変わるからです。

    違う環境で育った一卵性双生児は、遺伝子が同じでクローンといえどもかなり異なっているということは細胞の核内分子の修飾具合が後天的な環境によって変り、遺伝子の発現様式が異なるからなのですね。ちなみに修飾が異常に変わってしまったのが細胞のガン化です。

    <リプログラミングの障害>
    父方と母方からの遺伝子によってプログラムされて決められたように生きているのではない私、という生物は、ではいつリプログラミングされ、また何がクリテイカルなのでしょうか。

    DNAやヒストンの修飾に異状が生じ遺伝子の発現制御が乱れて発達障害となるインプリンテイング病がいくつか分かってきました(参考)。

    遺伝子修飾によるリプログラミングで外界にとりわけセンシテイヴな時期は配偶子形成と受精卵着床前の卵割期とのことです(図、左下)。

    各種の修飾酵素がきちんと働くためには細胞の状態、環境が重要となります。女性の卵は母親のお腹の中での胎児期に既に分化していきますから生まれる子にとっては祖母の身体状況が重要ということになりましょうか。また、悲しいことに受精が成功して着床する時期は女性が予知したり認識できたりすることはほとんどありません。ということは日頃の栄養状態や生活習慣が大切ということになりますね。薬、タバコ、お酒、放射線、ダイエット、睡眠不足、などでしょうか。。。。

    メデイアでは医学の進歩?とばかりに著名人の生殖補助医療(対外受精や顕微授精)のニュースを報じます。その医療ではもっとも重要な胚細胞分割の初期にシャーレ内でいろいろな薬物を入れて人間が実験操作をするために修飾の機構を大きく乱して疾患を導くと報告されています(参考)。  

  • Posted by 丸山 悦子  at 18:24Comments(0)長寿健康社会

    2012年01月06日

    資本金より資本をつくろう

    明けまして、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

    <絆と縁のソーシャル・キャピタル>
    資本と言えばマルクスの「資本論」、
    いえ「資本はこの鍛えた身体」と言う方もいれば、「沢山の友達が何よりの資本ョ」と言う方もいます。

    最近よく、人間関係の豊かさが社会の資本である、というソーシャル・キャピタルという語を目にします。

    昨三月の大震災では、誰もが何か差し出せるものがあるに違いない、と自分の時間、お金、体力を鑑みました。

    そして私たちは絆、見知らぬ方との縁のありがたさを認識し、社会的ネットワークの重要性を認識しました。
    このソーシャル・キャピタルは物的資本やヒューマン・キャピタルと異なって個人に属することなく、個人間の関係であるコミュ二テイで発揮されます。

    従って当然、人的資本に支えられ相互強化されていきますね(図、左)。

    <リーダーシップとフォロワーシップ>
    社会のあり方に目を向ければ、何はともあれひとびとの協調行動が社会組織の向上には欠かせないことを知ります。

    そして豊かな社会はコミュニケーションが活発でなければならない、ということが分かります。

    さらにそれが経済・社会面で好ましい効果となるにはリーダーシップの存在ばかりでなくひとりひとりが熟慮ある発言と行動を伴えるフォロワーシップ能力を持ち合わせることが大切、となります。

    TPOに応じて両シップを発揮したいですね。

    <健康資本>
    私は財政破綻に喘ぐ日本にとって今こそが、国民の健康資本について方策を打ち立てるべき時、と思います。

    健康資本は全ての資本の土台となるばかりではありません(図、左)。

    それは日本の平均寿命が世界一といえども健康寿命との差が10年近くもある、という大きな難題を解決する、と私は考えます。

    この難題は、介護を必要とする人生がとても長い、ということなのですから健康の維持が必須ですね。。

    税金で解決が出来ることとはどうしても思えないのです。

    スウェーデンで、26年間の長きに渡って健康調査がなされました(参考)。健康要素に男女の違いがあったのです。

    展望を持ってデータを集めることが大切ですね。

    ところでその調査の健康と適度なお酒の結果は意外でした。お酒は百薬の長、ストレスの解消ともいわれていますのでーーー

    お酒といえば絶えない飲酒事故が大問題です。

    日本人の場合は特に、適正量を規定することに難しさがあるのです。

    その理由はお酒が水と二酸化炭素に分解されるまでに重要である、肝臓のアルコール脱水素酵素とそれによって生じたアセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素において、日本人特異的な遺伝子変異があるからなのです。

    モンゴロイドである日本人の欧米人にない一塩基変異(本ブログ、参考)はその組み合わせはいろいろとなり、何十、何百倍と個人によって違う感受性が生じてしまいます(図、右)。

    増えるアルコール依存症と絶えぬ飲酒事故は日本人遺伝子の見地から社会環境を見直す必要がありますね。

    こうした欧米の研究情報から得られない日本人特異な遺伝子多型による飲酒行動や疾患についてはぜひとも創造的な研究を行って健康日本を築きたいものです。

    <長寿社会での資本づくり>
    多くの人が罹る生活習慣病である多因子疾患は、各人固有の遺伝子多型の重ね合わせによるので解析をするのが困難、そして有病期間が長い、根治法がない、よって行き詰まっています。

    ですからまずは自分で自分の身体に投資して、健康という資本を貯めましょう。そしてしっかり健康の自己管理をしましょう。

    私の万歩計は、この一年は3、663、714歩です(本ブログ、参考)。

    目標が達成出来た秘訣は、およそ7日で7万歩、を目指したことでしょう。

    歩くことが良いのか、薬や病院には縁も無く、人生まっしぐら?です~

    日本にはヘルス・キャピタルを、

    私にはベンチャー・キャピタルを!!

    どうぞ本年も宜しくお願いいたします。
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 22:20Comments(2)長寿健康社会

    2011年10月22日

    ジャンプ!!分子が決める飛躍力

    <ケロちゃんに靴を取られて大慌て!>
    玄関に何と4cmほどの小さい蛙がーーー
    廊下に這い上がろうとして何度でも必死に跳びます。でも届かず手足を伸ばしたままひっくりカエル。15cmは必要なのでした~
    それでもメゲナイ、メゲナイ
    まさにど根性ガエルですね?

    それにしてもシワッぽくて骨皮 筋衛門さん、この間の台風以来、我が家に緊急避難していたのかもしれません。
    玄関ドアを開けても考えあぐねていてなかなか出て行かないのでした。

    実は今朝、庭でこのケロちゃんはもっとびっくりなことをーーーいずれまた!

    さて、この連続ジャンプ力のエネルギーは細い手足でどのように作るのでしょうか。

    <筋肉は超高性能エンジン、ガソリンはATP>
    筋収縮の直接のエネルギー源はアデノシン3リン酸(ATP)(図、右上)です。
    1918年ドイツの生化学者マイヤーホフは、カエルの筋肉を使って乳酸(図、左)の発生が収縮のエネルギーを供給する、とする「乳酸学説」を提唱し1922年ノーベル生理・医学賞を受賞しました。

    ところが真実は、ATPのリン酸結合に蓄えられていたエネルギーが筋肉収縮のエネルギーだったのです。

    筋収縮運動は骨格筋細胞内のミオシンとアクチンという蛋白質の繊維同士の滑りによって起こります。

    ではなぜ筋肉はATPの化学結合エネルギーを使えるのでしょうか。

    はるか後にわかったことですがミオシンはATPの分解酵素活性を持つのでATPを水解して得たエネルギーで自身の構造変化を起こすことが出来るのです。

    そのATP分解酵素(ATPアーゼ)は神経からの信号がくると活性化されます。

    すなわち神経筋接合部において、神経から放出された神経伝達物質であるアセチルコリンが筋肉側にあるアセチルコリン受容体に結合すると筋肉細胞内のカルシウムイオン濃度が増大して細胞内ミオシン蛋白質の酵素が活性化されるのです。

    <時に応じてガソリンの供給の仕方は異なる!>
    短距離と長距離を走る時ではATPの産生経路が異なります。
    15秒くらいまでは細胞質にあるクレアチンリン酸によってATPが供給され、そのあと30秒くらいはグリコーゲンの分解系でATPが供給されます。
    10分以上の運動となるとミトコンドリアで血液からの酸素を使って多量のATPが供給されるようになります(図)。

    かくして図の点線囲みのように無酸素系で2つと有酸素系によって筋収縮のエネルギーと熱エネルギーが得られます。
    きっと、スポーツ選手はこれらの仕組みをうまく使い分けた強化訓練プログラムをこなすのでしょうね。

    ところで最近、体温が低過ぎる若いヒトが増えているとかーー
    スリムになったので筋肉が少なく、熱が十分作れないのでしょうか?

    <低体温が不健康の理由>
    蛙は変温動物でヒトは恒温動物です。

    私たちは36-37度を保つために食べ物から得たエネルギーの75%以上を体温維持に使わなければなりません。

    ヒトでは体内に沢山ある酵素類が36.5℃くらいで最も活性化され機能します。

    もし体温が1℃下がると、1)免疫力低下、2)基礎代謝低下、3)体内酵素の活性の低下、が生じて不調や老化がすすむ、といわれています。

    体温を上げるには代謝をあげる、それには代謝への影響が大きい下半身の筋肉を積極的に動かす、のが一番ですね(図、右)。

    ケロちゃんのジャンプは無酸素系持久力が強いばかりでなくどうも足首や股関節の柔軟性も高いと私は見て取りました。そこで私はお風呂で腱も揉みます。

    ヒトは加齢によって筋肉は細く少なくなり、ミトコンドリアも機能が低下し代謝が下がります。
    代謝が下がる、即ちATP産生能力が下がるということなのです。

    そして体温も下がっていきます。

    体温調節の機構が分子レベルで解明されると健康長寿への道がはっきり見えてくると思います。

    <体温を調節する脳(視床下部)の情報処理機構>
    体温は脳の視床下部の自律神経系と骨格筋の熱発生そしてホルモンの調節によって維持されています。
    いったいどのようにコントロールされているのでしょうか。

    最近、脳由来神経栄養因子(BDNF)がエネルギーバランスや摂食行動に関与するという報告がなされました(参考)。

    BDNFは神経細胞の分化、発達、生存、シナプスの可塑性に関与し記憶・学習に重要な分子であることが知られています。
    またうつ病では血中で低下しているのでうつ病の候補マーカーとしても研究されています。

    上記の参考論文ではBDNFの摂食抑制の仕組みを明らかにするためにBDNFを脳室内に投与しました。すると摂食抑制、脂肪の燃焼、体重の減少、深部体温の上昇がありました。

    これらのことを解明するために、視床下部の室傍核に多いコルチコトロピンホルモン放出因子(CRH)の拮抗剤を使って解析したところこれらの代謝エネルギー調節作用は、BDNFが室傍核にあるその受容体であるTrkBを介して、CRHというホルモンの発現増大を起こしたことによる、と考えられました。

    BDNFが、ストレス応答の要といわれているCRHの制御もしていることが示されたのです。

    ちなみに運動するとヒラメ筋(図、右)のBDNFが発現増大するとか、そして頭も良くなるらしい(本ブログ)。

    我が家のケロちゃんの脳はBDNFがいっぱいかも~~
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 22:58Comments(0)長寿健康社会

    2011年09月09日

    世界は慢性疲労症候群!

    <名にし負はば逢坂山のーーー> 
    今年はフェンスのさねかずらのつるが切っても切ってもクルックルッとまるで誰かを連れて来たいかのように、空に向かって伸びています。

    初冬に真っ赤に熟すこの実かずらの実は疲労、滋養強壮の生薬として知られています。

    百人一首で三条右大臣(紫式部の曽祖父)は逢瀬を逢坂山の小寝かずらのつるに委ねています。

    それにしてもなぜか古のひとの千々に乱れる脳に疲労感は感じられません。

    もしや、五七五七七や豊富な掛詞を繰ることが脳を十分に活性化しているのかも知れませんね。

    <疲労のセンシング機構>
    ひと晩寝れば翌朝はすっきり。
    これがけっこう難しい世の中になってしまったようです。

    数ヶ月も疲労感が続くとそれは慢性疲労なのです。

    疲労が溜まり易い人は、責任感が強くて取り越し苦労の多いひと――私も?
    そして、本音を出さない人、とか――やっぱり私は違った?!

    真面目過ぎる人は疲労感がマスクされやすく、がむしゃらに働いてしまうので、挙句の果ては過労死になるそうです。
    ですので脳の各部位のネットワーク、すなわち神経系・内分泌系・免疫系・に表れる疲労のアラーム(図の脳)はしっかり受け止めないといけません。

    ところで最近は子供にも疲労が蔓延とかーー塾やおけいこ、PCに忙しく睡眠時間の減少が原因とのことです。一説には環境ホルモン(参考、本ブログ)に因るともーー。

    <疲労の実態>
    成長期にホルモンがアンバランスになると脳細胞の発達の設計図が壊れてしまいます。

    神経伝達物質、ホルモンそれに免疫細胞が出すサイトカイン、これらは似たもの同士なのですから受容体を間違えたら大変です!!

    若年者の慢性疲労症候群の研究で血液中のピルビン酸のレベル(細胞のエネルギー産生力に関連する分子)やホルモン、深層体温のリズムなどに異常がある、と報告されています(参考)。

    疲労の血中マーカー分子としてCoQ10が報告されています。

    CoQ10は、細胞内にあるミトコンドリアの中でエネルギーの産生を司る分子であり抗酸化活性を持ちます。
    慢性疲労症候群の患者の血液で低下が認められるので、ストレスによって身体が過酸化の状態にある、と考えられています。
    CoQ10が強く低下している慢性疲労症候群患者では集中力と記憶力の障害も明らかでした(参考)。

    疲労の症状は個々人であまりに異なりますので、血液中の分子レベルの変化によって早期発見が出来ることを望みます。

    <疲労の社会的損失>
    厚労省の調査によると、疲労感に苛むひとの数は年々増加しており、慢性疲労による経済損失は一兆円以上にもなる、とのことです。
    慢性疲労は業務能力の低下のみならずうつ病(参考、本ブログ)などの精神疾患に至ることもありますから、それらの治療費も含めると極めて多大な損失となります。

    先日のニュースで、欧州EUにおいても疲労による心の病と神経疾患で10兆円以上の社会損失となる、という研究結果が報告されました。

    早急に、ストレスやリラクゼーション具合を評価できる指標の確立と、そして年齢でなく個々人のレベルを推し量れる、経年調査システムの構築を行なって予防したいものです。

    キレたり、ハイになったり、ハマッたり、私たちの脳は極めてフレキシブルです。
    取りあえずはペットとかアロマ、運動などの自分に合った疲労解消法を見つけたいですね。

    そして、疲労困憊の世界経済の治療法も早く見つかって欲しいのです~~

      

  • Posted by 丸山 悦子  at 22:58Comments(0)長寿健康社会

    2011年08月13日

    音色が脳をクリーンアップ!!

    <耳よりも脳で聴きたい~>
    夏の音に私の身体はリフレッシュされます。

    夏太鼓、ドドーンと上がる花火、ヒュルヒュルルーーのお化け屋敷、これらの音色は、その度に私の脳の奥で重ね塗りがされていくような気がします!

    私たちの耳は、音の空気振動を中耳(図の鼓膜と微小骨)から内耳の渦巻き管(図では伸ばして描いた)のリンパ液に効率よく伝達します。そこの有毛細胞の動的変化が、隣り合う神経細胞に電気信号を誘起させるので神経回路によって大脳へ情報が伝わるのです(図、右下)。

    音の周波数の情報は脳の海馬、扁桃体や脳幹などで、快、不快、いろいろな思いなどと結びつき、記憶として固着し、また自律神経系にも働いてリラックス効果も生じます。

    音がもたらす季節感や情緒感については日本人独特の脳の構造がある、として、こおろぎの声のはなしは有名ですね。

    日本文化に浸された?私の脳に、小学校の先生の言葉が思い出されます。
    先生はよく、ひとの話は目で聴け、とおっしゃっいました。聞け、ではありませんね。

    脳の情報処理能力は、音として聞くだけでなく、目でも聴かないと脳情報として十分とならないのに違いありません。

    <音波と電磁波の違い>
    音波は生物のコミュニケーションに欠かせません。発電器官をもっていれば電磁波も使えますね。

    音波も電磁波(電波、光、放射線)(本ブログ)も同じように波の性質を持ちます(図、上)。

    気体中の音波は媒体の分子が疎密に動いて縦波となって伝わります。

    しかし電磁波は音波と異なって、空間の電場と磁場の変化によって形成された波で、電界と磁界が交互に変化する空間そのものが振動している状態です(図、左上)。音速の約100万倍で伝わります。

    また大きな違いに、音波は媒質がなければ伝わらないのに対して、電磁波は真空中でも伝わるということがあります。ですから宇宙の彼方の太陽や星からの電磁波である光をキャッチ出来るのです。

    鯨は水中の音波を使って何百kmと離れたところの仲間と交信しあっているそうです。
    この水中での聴覚能力にはジェスチャーなど視覚による伝達法は及びようがありませんね。

    私たちはといえば、電磁波による携帯電話を発明し、今や音波も電磁波も、グローバルコミュニケーションに欠かせません。

    ところが健康面で大変なことがーー

    <過剰音環境が神経にストレスを生じる>
    少し前に、耳にあてた携帯電話からの電磁波が脳神経に害を及ぼす、という海外からの研究結果に多くの方が騒然となったばかりです。

    音波についても、頻繁にイヤホーンで音楽を聞く若年者の聴覚システムのダメージについて警鐘があります(参考)。

    また、雑多な音に囲まれた現代生活では、自然界の音の中にいるのに比べ、行き交う周波数がかなり脳の健康によくない状態のようです。

    実験動物にノイズ音を暴露すると聴覚神経細胞数が減少した、との報告があります(参考)。

    また記憶を司る脳の海馬で、神経の発達が阻害され記憶力の低下を起こす、という結果が報告されました(参考)。

    健康維持に向けた音響機器の性能強化や分析的開発を期待しますが、とにかく耳への過剰刺激は脳神経にストレスとなるようですので注意が必要ですね。

    ところで、ヒトの聴覚は20台半ばから有毛細胞の老化がはじまり、高音域(高い周波数域)がだんだん聞き取りにくくなっていくことが分かっています。予防しか方法は無さそうです。

    耳だけに頼らず脳で聴く習慣が、もしかして聴細胞のストレスを和らげて聴力低下を防ぐかもーー

    かのベートーベンは微小骨(図、中央)が硬化してしまい難聴となり、、自殺を考えるほど苦しんだといわれています。
    彼は人々に、耳の健康のために、音量を下げて音楽を聞け、と忠告していたそうです。

    <ハーモニーは脳の滋養となるか?>
    癒し系の音楽は脳神経の活性化や精神面に良好とも聞きます。

    すなわち、雑音による神経障害に対し楽音による対処法が考えられるわけですね。

    私たちの脳は規則正しい振動音を楽音と感じ、複数の音の周波数が綺麗な整数比になっている、この場合が脳は綺麗なハーモニーと感じる、とのことです。

    周波数の比は、1オクターヴでは1:2、ドミソ、ファラド、ソシレが4:5:6の比です。

    脳のオクターヴ比の認知については不思議なことに、ラ(220 Hz)を聞いて、次に1オクターヴ上のラ(440 Hz)を弾いてもらうとやはり、ラだとわかります。

    周波数の比である1:2を脳が自ずと感知する何か仕組みがある?のか、それとも音の学習記憶によるものなのか、どんなものでしょうか。

    良いサウンドが醸し出す、脳の共感力は深遠ですね。


    チェッカーベリーの赤い大きな実はクリスマスの花形です(ブログの写真)。
    すずらんの孫、とでもいいたくなるような可憐な白い花が葉に隠れるように咲いていました。
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 20:56Comments(2)長寿健康社会

    2011年05月29日

    名人とは

    <リーダーの才>
    今日の加速度的に進んだ科学技術で得た生活の便利さとは裏腹に、どうしてこんなに私達は将来が不安なのでしょう。

    原発の事故では人災というべき管理システムの不備がありました。
    的を射た施策は至難なのでしょうか。

    中国では古くから長きに渡り、即ち、隋の文帝から清時代までの1300年間(図)、官吏になるための科挙という極めて難しい試験制度が行われていました。

    合格するには経典学問や詩作などずば抜けた才能が必要とされ、人々は難関を競いました。

    それだけ国を治めていくことには厳しい人物評価が大切ということですね。

    <詩才溢れるも猛虎になった>
    私が小学生の時、国語の教科書に「山月記」が載っていました。これは中国の古書を題材とした中島敦の作品です。

    主人公である唐の李徴は官吏登用試験に若くして合格し、名声を得ました。が大官におもねる役人としての出世コースを嫌い、詩家として後世に名を残したいと思うようになりました。

    しかし自分の才能を信じ修行に没頭したものの他人が認めるような一流の作品は簡単には出来ません。
    もはや自分より劣っていたような同輩も既に高位についています。

    とある日、人食い虎に変じている自分に気付きます。日々人間としての心の時間が失せていきます。

    その博学才頴の李徴が「なぜ自分は猛獣になってしまったのだろう」と問うていたのがやがて「なぜ自分は以前人間だったのだろう」と考える自らの虎の脳に驚愕します。

    悲愁しその変貌を羞恥します。

    それでも毎夜、僅かに残る人間の脳である時間を詩作に向けます。

    ある日、虎の李徴は山道でかつての唯一の友に出会います。

    叢中に姿を隠したままその友に、人間である時間のうちに作った詩を都へ持って帰ってくれるよう頼むのでした。

    長安の都の書家や識者の机の上に自分の詩集が置かれることをまだ夢みているのです。妻子の生活を心配することよりもーー。

    小学生の私にたまらなかったのは「帰りは決してこの道を通らないでくれ、襲って食ってしまうから」と行列を率いている友に頼むところでした。

    その友は虎が詠む即興の詩の素晴らしさに感嘆しつつも「何かが足りない・・・」と思うのでした。

    <不射の射>
    とりわけ味わいのある中島敦の作品は「名人伝」です。

    官吏になれなかった趙の邯鄲(かんたん)(図)の紀昌は天下一の弓の名人を志します。

    紀昌は弓矢を手にすることが許されないまま五年間、師に言われたとおりに目の基礎修行を行ない遂に目に蜘蛛が巣を張るほどになりました。
    やがて、百発百中させるという師をも越えるようになります。

    そこで紀昌は伝え聞いた、山の頂に住むという弓の名人、老隠者のところに赴きます。

    紀昌は技を見せようと5羽の鳥を同時に射止めます。

    老師は「そなたはなかなかの腕前じゃが、所詮、射の射というもんじゃのう」と言って、今度は自分はゴマ粒ほどに天高く飛ぶ鳥を矢も弓も無くして射落としました。

    私の洋弓の経験では矢を放った瞬間に既に、正鵠を得られることが、その命中度が身体で分かることがありました。

    それゆえに弓や矢がなくとも、命中すべく絞り込みと放った瞬間の全身の血肉のせめぎあいは、素手にして再現することが可能のようにも思われます。

    とはいっても私がどんなに頑張ろうとも、矢無しの射で的に射られたあとが残ることは有りようも無きことです。
    愚者の射ですね。

    紀昌は九年の歳月を老師に学び、山を下り邯鄲にもどります。

    都の師は紀昌のその木偶の如き愚者の如き、かつての精悍さの微塵もない顔つきをみて「おお!足元にも及ばぬ天下の名人となった」と感嘆したのでした。

    人々は名人の名人と誉めそやします。鳥は紀昌の家の上は避けて飛ぶようになりました。

    しかし紀昌は一向に弓を引きません。

    そして40年が経ちました。

    やがて紀昌は耳は目の如く、鼻は口の如く、目は鼻の如くとなり、我と彼との区別も付かなくなりました。
    弓や矢をみて、それは何か?何に使うものか、と問うのでした。

    真の名人となった紀昌の心は弓への執着から離れ、遂には弓そのものを忘れ去るに至ったのでした。

    紀昌が静かに煙の如くこの世を去ったあと、邯鄲の都中の達人が、楽師は弦を、画師や書家は筆を、工人は規矩をしまい隠し、使うことを恥じた、とのことです。
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 00:06Comments(2)長寿健康社会

    2011年04月09日

    一粒の麦もし死なずば

    <春来たりて、>
    新たな思いに充ちるのがこの季節です。

    思えば、中学生活も終わりに近づいた頃には、授業なさる先生の生き様に未来の自分を重ねたりしました。
    英語も数学も着物姿の先生、休み明けの授業では、お孫さんの話に花が咲くことも!

    化学の授業中のこと、化学大好き才女が「先生はなぜ教えに来られるのですか」と突如、質問しました。
    数コマの授業のために遠い平塚から来られることが少女達には不思議だったのです。

    色白のお顔に赤い口紅、金縁メガネの奥の利口そうな瞳が空に飛び、微笑まれました。

    「一粒の麦、もし死なずば、です」。

    もしひとりでも芽が出て実れば、と願って教える、と私は解釈してしまいました。

    生命の分子機構の解明には程遠い時代であり、私は化学の授業に不燃焼気味でした、が、いみじくも、若い麦の穂を心に描きました。

    先生はご存命であられましょうか。

    私がキリストのその言葉の意味を知ったのは、はるか歳がいってからなのでした。

    <あなたが主役です>
    私は、一を知って十が分かるように教えて欲しい、というズボラモノ?でした。

    今は情報時代、知識を与えるだけの授業は無用ですね。

    もしかしたら教育の真髄は、あなただけのDNA情報という唯一の生命言語に、自らで責任を持たせる、ということかも~。

    いえ、教師はほんのお手伝い?

    何はともあれ今は、自動車の免許更新が自分しか出来ないように、まず、自分の遺伝子情報にも事故をおこさせないように、その戦略の更新に、心することが重要と思います。

    <遺伝子の損傷>
    放射性物質は依然と漏出が続いています!!

    規制値については、何とも、頭が痛みます。

    つまるところ、半径数十km以上での健康への影響はデータが揃わず判断出来ないのです。

    原発周辺はいわば東京の台所です。

    私達は毎日、いったい何キログラムの飲み物、野菜に魚、肉、果物、を体内に入れ続けていることでしょう。

    WHO(世界保健機構)の年間50ミリシーベルト以下に、というガイドライン値も現実みを帯びてきました。

    蓄積的な影響を無視して、レントゲン一回分とか、ニューヨークまでのフライト一回分のように外部被曝と一緒にしてはいけませんね。

    放射線障害は臓器の発達段階や個人の修復能により異なります。

    母親由来のゲノムDNA を持つ卵と父親由来のゲノムDNAを持つ精子が受精によって融合することにより、私達は両親由来のゲノムDNAを持つ個体となります (図)。

    放射線を受けると、体細胞と違って半分のDNA量で、分裂増殖もしない精細胞や卵細胞の生殖細胞はダメージが大きく、受精不可能となり不妊をもたらします。

    また、分裂が盛んな受精卵や胎児期(2ヶ月前)では極めて放射線への感受性が高く染色体破壊、DNA二本鎖の損傷などの確定的な影響が起こることが知られています。

    一方、細胞死に至らないような低線量障害の生殖細胞では、子孫への遺伝的影響が残るという問題があるのでどうしてもDNAレベルの解明が必要です、がまだヒトの実験科学研究は困難です。

    従って多くはガンの発症として、遺伝子の突然変異の障害を長期間にわたって統計的に、疫学的に表すしかありません。

    最近、少量被曝に着目した分子機構の研究が動物で報告されました(参考)。

    放射線障害の度合いは遺伝因子と環境因子によります。

    薬の副作用や酵素蛋白質の活性が個人の遺伝子上のSNPs(2月本ブログ)によって異なるように、放射線の障害も個人の遺伝子のDNA配列に影響されると考えられます。

    従ってその詳細には、どのような遺伝子の発現が、またそれを制御するどのような転写因子が放射線で影響されるかを分子レベルで解明することが重要となります(図、中央)(参考)。

    環境因子としては日々の生活習慣や食生活が大きく関連します。

    <体内被曝と和食>
    細胞内では、放射線の化学(電離)作用によって、活性酸素(2010年11月ブログ)が過剰に生じ、遺伝子や蛋白質の損傷が極めて起こりやすくなります。

    通常いろいろな原因で生じる細胞のダメージは、幸いなことに人類が獲得したさまざまな酵素蛋白質による修復力で乗り越えています(図、下)。

    ではこの期に及んで、私達は修復能力を上げられるものでしょうか。遺伝子のDNA配列は何としても変えられませんしーー。

    ヨウ素131については海草を常食した日本人は救いがある、とも聞きました。

    放射線障害の予防には緑茶の成分や寒天、昆布(海苔、ワカメも)、梅干、玄米、ごぼうなどの食品の効果が示唆されています。

    結局、排泄効果や活性酸素を除くための酸化防止力のあるもの、免疫力を高めるものが必要で、抗ガン効果のあるものなのですね。

    ダシ昆布が沢山入ったお鍋でその昆布も平らげる、我が家は和食党政権です。

    「ほらみて、やっぱり日本食!」と夫に申しましたら

    「独り生き残ってもしょうがないやー」でした。。。

    あなたは?  

  • Posted by 丸山 悦子  at 23:26Comments(0)長寿健康社会

    2011年03月25日

    ウランやプルトニウムは紙一重で、×××

    <想定外とはーー>
    東日本大地震で被災されました皆様、心から御見舞いを申しあげます。

    東京では電車が不通となり、私のみならず多くの方が職場で一夜を明かしました。

    何と、翌朝目に飛び込んだのは、1000年に一度?の、4階のビルをも飲み込む巨大津波の爪あとの映像でした。

    更に続く福島原発の損壊のニュースに、炉心溶融に怯えながら何日も釘付けとなっています。

    私達は原爆による唯一の被爆国民であり、またチェルノブイリ原子炉の惨劇が脳に焼きついているのです。

    ところで誰が、圧力容器や格納容器そして冷却装置という安全のはずだった、見たことも無い巨大装置の崩壊を、テレビに映る白煙と放水の彼方に、思い浮かべることが出来たでしょうか!

    実は、私は先年、原発の中を見学する機会がありました。

    海辺にそそり立つ、巨大プラント群。

    制御棒の仕組みを説明され、格納庫壁の厚さを目にしました。

    しかし閉鎖系になり得ない仕組みには安全の文字は浮かんで来ないのでした。

    ひたすら私は携帯写真に収めました、が機種交換の際に全て失せました。

    お見せできないのが残念、の一語です。

    <一度あることは二度あると思えー>
    電気のエネルギーを得るために、ウラン235の核分裂反応による熱を利用します(図)。
    しかしその時、原子炉や核分裂反応を止める制御棒、そして使用済みの核燃料は3千度にもなります。
    もし温度が下げられなくなると炉心溶融のみならず恐るべき核分裂連鎖反応が起こってしまい、いわゆる臨界となります。

    何と信じられないことには、津波によって、冷却循環装置が停止してしまったのです。

    核爆発?そして放射性物質の漏出の危機です。

    <原発と核兵器>
    ウランには核分裂を起こしやすいウラン235と、核分裂を起こしにくいウラン238があります(図)。

    原子力発電では、自然界での両者の比率よりウラン235を高く濃縮して燃料とします。

    ところでウラン238は中性子を吸収して核分裂していくとプルトニウムになります。
    プルトニウム239は核分裂しやすく核兵器に使われています。

    原発で温度コントローラーなどの破損によって通常の一個以下の中性子による反応が制御されなくなると、プルトニウム239が多量に出来、中性子が過剰に放出され核連鎖反応がおきる、いわゆるプルトニウム爆弾(長崎の原爆)の危機が生じてしまうのです(図の中央)。

    運命は、中性子を制御する制御棒と大量の水で温度を下げ続けられること、で決定されるわけですね。チェルノブイリでは制御棒に異常があったとか。

    <ベクレルとシーベルト>
    私は今日も、安全な水や野菜を求めて右往左往でした。野菜の放射能汚染や水道水が規制値を超えた、というニュースがあったからです。

    ウランは核分裂して生体に有害な放射性のヨウ素やセシウムにも変わっていきます。

    放射性物質が出す放射能量はベクレルで表されます。

    個々の放射性物質は半減期やエネルギーの大きさも違い、人体での濃縮場所、排出性も違います。

    そこで放射線を受ける身体の部位なども考慮した数値で比較する必要が生じ、シーベルトという単位を使い、規制値が決められました。

    <人類の叡智はー>
    過剰な放射線による被害は、広島、長崎の被爆者の追跡調査データから、発ガンや遺伝子障害が起こることが分かっています。

    チェルノブイリでは今なお放射性セシウムの害、そして放射性ヨウ素による甲状腺ガンで苦しんでいる何千人もの子供がいますね。

    私達は二の舞を避けられるでしょうか。

    また今後は、日夜、命がけで冷却や復旧のために働いて下さっている方々のみならず、除染などで働く方々の被爆にもくれぐれも注意を払っていかなければなりません。
    チェルノブイリ爆発での作業員の脳での後遺症も報告されています(参考)。

    内部被曝のための治療法や薬の開発に役立つ、研究上の発見を祈るばかりです。被曝障害のバイオマーカーによる分子レベルの機構の解明が必須です(参考)。

    人類の叡智は宇宙に飛び立つことを可能としました。

    原子力兵器である原爆(核分裂エネルギー)や水爆(核融合エネルギー)も可能としてしまいました。

    やはり、私達は、核の平和利用は出来ない、のでしょうか。



    赤い椿が沢山咲いています。

    何を知ったか、今年はどこか悲しげな風情です。。。
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 23:56Comments(0)長寿健康社会

    2011年02月23日

    遺伝子検査技術の進歩

    <個性が発揮されれば社会が発展> 
    東京も大雪に見舞われました。

    雪なんかにびくともしない可愛い日本寒水仙は、さながら、地上に舞い降りた天使たちのようです。

    中国の古典では水仙は、その水辺で咲く姿を、仙人にたとえられたようです。

    水仙の学名、ナルキッソスは、ギリシャ神話で、水鏡に映った自分自身に恋してしまった、美少年ナルキッソスに由来しています。
    何とも、水面の中の像は、ナルキッソスの想いに応えてはくれず、絶望した少年は悲劇を迎えます。

    社会の一員として私達は自己評価でなく、他人の評価で仕事の役割を担っていくことになります。そのギャップが著しいと生き難い社会となり、不登校やうつ病などの原因となってしまうのではないかと思います。

    他人とは違う自分を大切に、存分に社会に役立つよう、時には自己反省もしつつ力を蓄えていきたいものです。
                                                                 
    <あなたと私の違いは遺伝子上のSNPs(スニップス)>
    細胞の核内のアデニン(A)、 グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の30億個の核酸塩基の配列そのものが、遺伝情報になっています(図の右)。

    人の遺伝子の99.9%は同じ配列であるものの、個人によって塩基配列に僅かな違いがあることが明らかになってきました。

    ある生物種集団のゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性が見られ、その変異が集団内で1%以上の頻度で見られる時、一塩基多型、SNPsと呼びます(図)。

    ある特殊な人だけにまれに見つかった変異は多型ではなくミューテーションと呼び、遺伝病や発ガンの原因です。

    SNPsは、糖尿病や動脈硬化(脳卒中や心筋梗塞の原因)など、これまで生活習慣病と呼ばれていた病気に関係していることが明らかになりつつあります。

    SNPの違いによって体内の酵素の働きなどが異なるので、SNPsを調べれば、特定の病気にかかりやすいかどうかが判別でき、また特定の薬物にどのように反応するかも予測できるのです。

    従って、遺伝情報による患者個々の体質に応じたより適切な医療はオーダーメイド医療、と呼ばれ、SNPsを利用した診断の実用化と普及が大いに期待されています。

    今後は測定の迅速性、簡易化、コストの低減化のための基礎研究も必須です。私も開発研究にチャレンジです。

    <遺伝子検査>
    DNAは安定ですので、犯罪捜査や親子鑑定などの個人識別にも極めて有効となりました。

    豊富になった遺伝子情報によって、これまでの培養法に変わって病原微生物の検出や感染源の調査も可能となりました。

    また特に、今までの臨床検査で分からなかったガン診断や遺伝病の確定も出来るようになり、再生医療とともに遺伝子治療にも焦点が向けられています。

    今後、遺伝子検査・診断のニーズが高まってくることが予想されます。

    しかし、最近、遺伝子検査を子供の進路や適正など教育に適応しようとするビジネスがあるようです。

    時期早々といわざるを得ません。なぜなら、人の能力は多数の遺伝子のオン、オフが時間とともに複雑に組み合わさって、多彩な環境のもとで醸し出されていくからです。

    またヒトの遺伝子解析は個人の情報に留まらず、血縁関係者に共通することとなりますので社会倫理上充分に熟慮すべきことですね。

    <遺伝子発現の調節役はRNA>
    生命のしくみを知るべくゲノムプロジェクトが、10年に渡る膨大な国家予算のもとに、世界的に全DNA配列決定を目指して進められました。

    遺伝子解析の先端技術開発が切磋琢磨されたのみならず、思いもよらぬことが分かってきました。
    それはマイクロRNAです。

    DNA(デオキシリボ核酸)の遺伝情報をRNA(リボ核酸)に写し取ることを転写といい、転写によって出来たメッセンジャーRNA(mRNA)は核の外に出て翻訳、すなわちmRNAの指示するアミノ酸配列からタンパク質の合成を行います(図の左下)。

    さて、生命の複雑な機構を統合していくためには、転写を調節する必要があります。何かがDNAに働きかける必要があるのです。

    これまでDNAの読み取りに働きかける分子はタンパク質である転写因子が知られてきました。ところが特定のタンパク質を作るための遺伝子ではないDNAから読まれる、すなわち非翻訳RNAが遺伝子の発現を調節し、発現の仕方に微妙な影響を及ぼすことがわかってきたのです(参考文献)。

    ですから沢山すぎるジャンクDNA配列、とヒトゲノム解析で思われた配列が機能RNAを産生しているなら、思った以上にヒトの遺伝子数が少なかったという解析結果も納得ですね。

    最近、マイクロRNAを過剰発現させた培養神経細胞の研究で、記憶を司る海馬の神経信号伝達の機作にマイクロRNAが関与し得ることが報告されています(文献)。
    RNAが利発な脳を繰るのでしょうか。食べ物からの核酸も脳の機能や健康に大きく関わりそうですね 。

    マイクロRNAの微細な調節機構が明らかになれば、生命のしくみのみならず難病の解明や治療に新展開が見られるかも知れません。



      

  • Posted by 丸山 悦子  at 00:50Comments(2)長寿健康社会

    2011年02月08日

    日本に必要なのはセンス・オブ・ワンダー

    <なぜだろう、なぜかしら、の意気がーー>
    自然の摂理に畏敬するこころ、それが逆境にもめげない、自らの生きる道を探せるような感性を生み出す、と聞きます。

    そこに、閉塞を脱却するための道がありそうです。

    時空の永劫性や人の命のはかなさから関心を背けないこと、が大切ということでしょうか。

    <数分で命が消える――>
    はかない命といえば、私はやはり脳の重要性を思います。

    私達は日々何のことなく、息を吸う → 肺が空気を取り込む → 肺から血液が酸素を取り込む→ 血中のヘモグロビンが酸素と結合して血液に乗って脳まで流れる→脳細胞がヘモグロビンから酸素を捕る、その酸素を使ってブドウ糖を分解してエネルギーを得る→神経細胞が巧みに協働して、意識を保つ、思考を練る、ということが出来ています。

    ところが薬物ショックや脳幹部の障害、事故などで心肺停止状態がおきると虚血となり、酸素の供給が絶たれます。

    すると脳の機能は3~5分で停止し、神経細胞は死にます。脳死です。

    いち早く血流を再開して酸素を供給しなければなりません。

    最近はどこでもAED(自動体外式除細動器)の文字を目にします。
    音声に従って誰でも出来るようになっていますからイザと言う時は気道の確保、呼吸の確認をして、蘇生率を上げるべく渾身の力が振り絞られるべきです。

    <脳の毛細血管>
    一刻を争う理由は、脳には,100億以上の神経細胞があり重量は体重の2%ほどですが、その酸素消費量が全身の25%にもおよぶからです。

    脳は酸素を一番多く消費する極めて酸素要求性の高い組織なのです。しかも酸素を蓄えておくことができません。

    ですから、脳は多くの血液と酸素を間断なく要求するのです。

    脳の毛細血管の血流と脳機能は強く関連します。

    酸欠になると欠伸のみならず、やる気や根気のエネルギーが失せます。

    時に私は、ひと呼吸や飴玉ひとつで脳がクリアーに~。

    脳の毛細血管は特別な構造です。血液脳関門という機能があり、神経細胞に必要な物質(栄養)のみを取り込み、不要な物質は取り込まない、体の他の毛細血管とは解剖学的に異なる仕組みが整えられています。それを支えるのは血管内皮細胞同士の密着結合(tight junction)とグリア細胞(アストロサイト)です(図)。

    この血液脳関門の障害には血管性認知症があります。
    血液脳関門の機能変化をバイオマーカーによって検出出来るようになることが脳の健康管理に極めて重要です。

    <酸素を貯蔵出来る色素蛋白質>
    酸素を脳に運ぶのは血液中のヘモグロビンです。

    成人のヘモグロビンは、αサブユニットとβサブユニットと呼ばれる2種類のサブユニットそれぞれ2つから構成される四量体構造をしています(図の下)。
    それぞれのサブユニットはグロビンと呼ばれる蛋白質部分に補欠分子族である1つのヘムを持ち、ヘムが酸素と結合します(立体構造図)。

    すなわち、ヘモグロビンは局所の血中酸素分圧によってヘム部にO2を結合させたり、また蛋白質の末端にCO2を結合したりしてどんな末端にも酸素を供給します。

    私達の身体にはこの酸素運搬屋である赤血球のヘモグロビンの他に、肉や魚の赤身などに多いミオグロビンという、酸素を結合できる赤い蛋白質があります。それは唯一酸素を貯蔵できる筋肉の蛋白質です。
    ところが最近、脳の神経細胞にもヘムをもつヘモグロビン類似蛋白質が見つかりました(参考文献)。脳神経機能における解明が待たれます。

    生死を分かつクリテイカルな5分がたとえ少し延びただけでも、人命救助への恩恵は測り知れません。ですから、脳にも発現し得るこれらの分子を制御できる薬剤が開発されて、緊急時には自分の脳細胞から酸素が供給出来るような仕組みが開発されたら良いと考えます。

    <寿命が延びたら認知症が増大してしまった>
    脳・心血管系障害による死因がトップになりつつあります。

    脳の血管が詰まる ことによって脳梗塞、血管が破れると脳出血、これらの疾患が脳卒中と呼ばれ、神経系が障害されたり認知異常が現れたりします。

    血管の障害は加齢や生活習慣の乱れによる動脈硬化が主な原因のようです。

    脳・心血管系が異常になると酸素供給が低下して、細胞内でのエネルギー産生が障害され、神経細胞の有用蛋白質の産生低下や異常蛋白質が作られたりしてしまいます。そして神経細胞死が生じてしまうのです。

    一旦起こった動脈硬化はもとに戻せません。

    正常な老化として血管の動脈硬化は進んでいきますが、できるだけその進行を防ぐ努力が必要ですね。

    生命力を下げない、病気になりにくい体にする、そのために若い時から生活習慣をしっかり守り、自分で健康管理を行うこと、が大切です。


      

  • Posted by 丸山 悦子  at 23:50Comments(2)長寿健康社会

    2010年12月10日

    Green HandでGreen Earth!!

    <花とお話すれば――>
    私には、お金も時間も掛からない、マル秘の趣味?があります。
    思いがけずもそのおかげで、本ブログ訪問者へのお口直し?となっています。

    私は花屋さんの片隅で「半額」と札のかかった「もう駄目っ」とばかりの植物をたまに購入します。
    ぺチャーッという顔つきだったのが、いつの間にやらきれいな花を咲かせていると、おかしくもなります。

    挿し木をすると、たいていは付いてしまうので「グリーン・ハンドをお持ちなのね」と昔、お隣の方から言われたことがあります。

    切って幾本も挿しておくと、いつの間にか一個だけが育っていることがよくあります。
    二個や三個でもいいのになぜ一個?
    他の全員が「僕たちに変わって生き延びてね」とありたけの生気を渡したのかしら、いえ、やっぱり偶然の為せる業、と自分に言い聞かせるのです。

    ある日、玄関先で、小さい兄弟らしき男の子が二人。お兄ちゃんが弟にこう言っていました。
    「花はね、話かけるとこういう風にきれいに咲くんだよ」。

    弟のきらきらの顔が忘れられません。

    <グリーンが意味するもの>
    私にはグリーンは平和とか真実のイメージがあります。

    グリーンは、最近はもっぱら、青二才でなく、環境にやさしい、とくに地球環境の保全を意味しますね。
    グリーン・ハンドは和製英語かもしれません。greenish でなくて、greenableとか、植物とcommunicateやtalk toの意でしょうか。

    私達の脳は、太陽光に含まれる、葉に吸収されずに反射された波長を、グリーンと色覚します。

    葉の葉緑体では、光合成色素、クロロフィルがグリーン以外の波長を吸収して、そして自ら励起して電子を放出します。一連の電子の受け渡しと吸収したCO2を使って糖の合成がなされます。

    <地球を救うのはーー、ミドリムシでベンチャー大賞受賞>
    さて、光合成をするのは植物ばかりとは限りません。

    ミドリムシは光合成も出来るし、鞭毛で運動も出来る単細胞です。

    ミドリムシはムシにあらず、でゾウリムシや粘菌、アメーバ、マラリア原虫などと同じく原生生物界に分類されています(図1)。

    実は最近、水田や水溜りにいる、このミドリムシが環境のCO2削減や食料源として役立つことで、着目されています。

    ミドリムシで起業した出雲社長は学生時代からの夢を果たして、その大量培養技術で今年度の東京都ベンチャー技術大賞を獲得しました。

    ミドリムシは脂質に富むので油が取れ、バイオ燃料としても有用です。減少一途の埋蔵・化石資源問題に朗報をもたらしました。

    驚くこと勿れ、1切れに2億個以上のミドリムシが入ったカステラも売り出されたとかーー。
    抹茶カステラと間違えそう~~

    <ミドリムシの正体は>
    随分と私達に役立ちそうなミドリムシです。
    食料としての利点は、その養分に加え、植物や細菌が持つ、消化が難しい細胞壁がないことです。

    やっぱり、ムシなの?

    ではどうして、光のエネルギーを使える植物のような、動物のような、生き物がいるのでしょうか。
    その昔、20億年位前でしょうか、ある真核生物はある日、光合成が出来るシアノバクテリア(原核生物;細菌)に感染し、共生するようになりました(図2)。そしてさらに、その共生植物を鞭毛虫のような原虫がまたパクッとやって、ミドリムシが生じた、とのことです(図3)。
    原核生物について11月28日に書きました。

    <光センサー蛋白質の同定>
    ミドリムシの学名はユーグレナ、美しい瞳、と名付けられた如く、顕微鏡下では、カロテノイド色素を持つ、オレンジ色の眼点が見られます(図3)。

    眼点は鞭毛の細胞内構造と一緒に光受容体装置を作り、光によって運動方向や速度を調節するようです。

    何と、ミドリムシの光受容体はphotoactivated アデニレート サイクラーゼ(PAC)という、セカンド・メッセンジャーとして知られるcAMPを作る酵素でした。

    この酵素が、電子移動に使われる補酵素であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を結合、解離させて酵素活性の調節を行うことも分かってきました。最近、分子生物学的に構造解析がなされました(文献参照)。

    ミドリムシの光の受容には細胞の吸収スペクトルからフラビンなどの色素の関与が長い間推定されていました。ミドリムシはCO2と光で増える単純な生き物と思われますがなぜか、生化学的な検証には年月が必要でした。もしや、膜蛋白質の可溶化にミドリムシの脂っこさが問題だったのでしょうか。脳も脂っこいーーー。

    光による運動の分子メカニズムについては、太陽光の特定の光を信号としてフラビンからの酸化還元色素電子の放出をして運動に利用しているらしいこと、運動の調節因子がcAMPであること、は分かったのですが、この光センシング・システムによるメカニズムの詳細は、高等生物の運動にみられるようなアクチンとミオシンのスライディング機構とは異なり、未知のようです。

    ミドリムシは目と足がくっ付いていて、スバシッコそうですね、単細胞ですけれどーーー
    私の脳もどこか単細胞的。。。


    挿せば、幾らでも増える菊とバラです。傍の水仙も冬が遠からじ、と蕾を見せました。






      

  • Posted by 丸山 悦子  at 01:07Comments(0)長寿健康社会

    2010年11月14日

    ヘルスケア: カロリー制限で寿命の延長

    <認知症の予防とそのメカニズム>
    日本では超高齢化が進み、老化による脳疾患が増大して、大きな社会問題となっています。

    老化による脳神経系のダメージは、本人の自立した生活を奪うばかりでなく、精神障害も起こしますので、周りの方も大変です。

    未だ、脳機能障害の治療法は解決していませんので、若い時から「予防」することが極めて重要です。

    ところで、脳神経系のダメージは、どのように生じて、どうしたら、防げるのでしょうか。

    老化による脳疾患、パーキンソン病(PD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)および脳梗塞は、主に、酸化ストレスが関与していることが知られています。

    酸化ストレスとは、生体内で生じた活性酸素などによる酸化力が体内の抗酸化力を上回った状態のことです。

    酸化ストレスは、脂質、蛋白質、糖、核酸などを酸化変性させ、細胞機能を障害したり、炎症反応を誘起したりします。

    脳は、脂質に富むため、酸化損傷されやすく、酸化ストレスが亢進しやすい組織なのです。

    従って、いろいろな抗酸化物質や抗炎症物質が含まれている野菜や果物を食べれば、細胞の酸化還元状態の破綻が防御されたり、いち早く修復がなされたりします。

    認知症の予防としては、「食べ過ぎない」、「適度な運動をする」、「野菜や果物を多く摂取する」、という生活習慣の改善が叫ばれています。

    種々の動物実験から、カロリー制限をすると、その最長寿命が延長されて、さらに、生活習慣病、神経変性疾患、ガンなど、さまざまな疾患の発症、進行が抑制されること、が分かってきました。

    では、なぜ、カロリー制限や運動が良いのでしょう。

    <軽いストレスが命を活性化>
    これまでは、カロリー制限の効果として、血糖値が低下して、細胞内のエネルギー産生器官であるミトコンドリアのATP産生が低下し、細胞の酸化をする活性酸素種(ROS: reactive oxygen species)の産生が抑制されるから、と考えられました、が、最近では、カロリー制限は、軽度なストレスとなって、即ち、良い刺激となって、生体が、酸化亢進という悪い環境に立ち向かえる、即ち、生体が持つ適応対応力を高める、と理解されています。

    運動をすれば、ミトコンドリアでの、酸素消費・ATP産生が亢進する結果、必然的にROSの産生は増加して、細胞にダメージを与えます。

    従って、過度の運動は、生体にとって有害です、が、適度な運動は、血流増加による栄養補給のみならず、軽度な酸化ストレスを生体に与えることとなって、機能蛋白質の発現増大などを導きます。

    そして、細胞はより大きな酸化ストレスに対して、抵抗性を得て、準備万端な体制作りが誘導される、というわけです。一粒万倍、備えあれば憂いなし?ですね。

    うつ病や自殺者が後を立たない現代社会は、脳の持久力、いや、耐久力と言いましょうか?筋肉以上に求められそうです。

    <長寿へは、腹五分、運動、そして、ファイトケミカルズ>
    これまでの研究で、認知能力の改善に効果があったものとして、大豆イソフラビン、茶由来のカテキン、ハーブ抽出物、きのこ類、などが報告されています。

    最近よく目にする、ファイトケミカルとは、必須栄養素ではありませんが、欠乏すると、病気になりやすくなる、栄養素のことです。

    野菜や果物に含まれる植物由来の、それ自体が抗酸化能を持つ、アントシアニンのようなポリフェノール類やカロテノイド類などの成分です。酸化ストレスを緩和する力がありますので、疾患の予防や老化抑制に役立つ、といわれます(上図、参照)。

    ストレスと戦うファイト(fight)がある、ファイト(phyto)ケミカルを、日々しっかり取り入れましょう(下図、参照)。

    カナダの砂糖楓から取れるメープルシロップがビタミン、ミネラル、ポリフェノール類が多いとのことです。私は、酸化ストレス予防戦略として、ファイトケミカルが豊富な、アントシアニンの多いブルーベリージャムやメープルシロップを、ヨーグルトに少し掛けることに、しました。

    何はともあれ、生体の酸化還元状態をチェックできる、その評価システムを開発することが、一番の予防戦略ですね。

    <科学的に対処するには>
    細胞は、環境応答への情報伝達をすべく、細胞の酸化還元状態によって、増殖、分化、細胞死、へのルートを決定します。

    アルツハイマー病やパーキンソン病の脳では、不可逆的に酸化が進んだ酸化物質が見つかっています。

    問題は、脳の神経細胞は、ほぼ全てが分化が終結していて、もう分裂・増殖しないことです。従って、ストレス過多で酸化ダメージを受けると大きな痛手です。

    脳は、送られた多量の血液から、栄養成分を得て、精巧に機能しています。その機能の維持のためには、常日頃から、ファイトケミカルや多彩な食品を合わせ摂取することが重要なのです。

    自分の血液などを分析して、栄養の取り方や体の酸化ストレス亢進の状態がチェック出来て、数字で記録されたら、どんなに素晴らしいでしょうか。

    今後の研究者の役目ですね。しかし、新規技術の創出には、高額な分析機械の購入から始めなければならないのです。

    私は、人々が、ストレスや脳機能関連物質の異常をセルフチェック出来る、「脳・アンシン・キット」の開発を目指して、目下、奔走しています。
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 22:45Comments(2)長寿健康社会

    2010年09月29日

    鶴は千年、亀は万年、ヒトは無限~

    <花の命はーー>
    厳しかった猛暑の日々を振り返ってみますと、誰よりも元気だった百日紅が思い出されます。

    七月から、どこの街路も、白、桃、深紅の花が目いっぱい賑わっていました。

    何とまだ咲き続いていますので、今年は、東京で100日がクリアー、です。

    百日紅は幹がすべすべなので日本では、さるすべり、と読みます、が、中国では、恋人の帰りを100日間もたたずんで待った場所に、何と100日間、花が咲き続いた、として名付けられたそうです。

    どんな花も、いつも、余りにひたむきなので思わず足を止めます。

    そして、それが乗り越えた冬の日々に想いを馳せてしまいます。

    <生と死の狭間で>
    亀の寿命は百年ぐらい、とか。

    もっと下等動物で、長くても数百年。

    しかし、植物なら屋久島の杉が数千年、と凄いです。

    ヒトの寿命は江戸時代が50歳、今は85歳、やがて130歳。

    食べ物、運動など環境が整えば150歳以上も可能とのこと。

    やっぱり、嬉しいことですね~

    体の中を見れば、赤血球は120日、腸の上皮細胞は3-5日、胃は18時間程度で細胞は生まれ変わっています。

    まさに生々流転です。

    でも、みんな同調していますので体を少し変えてみよう、と思ったら石の上にも3年かな、と私は思います。

    エェッ、手っ取り早い薬に頼りたい?

    分化しきった神経細胞と心筋細胞を除いて、正常な細胞はあるところで分裂を停止して、死にます。

    ところが、何かの引金によってその箍(たが)が外れてしまったのが、がん細胞です。

    ガン治療や未来(無限)の命のためには、生き返りの機構(細胞蘇生)や生まれ変わる機構(細胞分裂と増殖)の研究が重要ですね。

    <ラインを振り返り、そして、ラインを引こう>
    単細胞から機能分化した多細胞体はやがて有利な形質を残しながら、複雑な機能をもつ高等生物へと進化しました。

    私達、現生人類は15-20万年前にアフリカで誕生しました。

    右図にその歴史の概要を描いて見ました。

    私達は、長い世代交代によって獲得した形質を蓄積・係累して、ついに、知性あるもの(サピエンス)になれたのです。

    ところが個人の歴史では、新陳代謝して細胞が分裂増殖するとき、悲しいことに、全く同じ細胞を生じることが出来ません。

    そのたびにエラーを増してしまうのです。

    そして修復や防御をしきれなくなると、遂に生命の存続が断たれます。

    ですから、「働きバチ」となって、新陳代謝を激しくして、過度に細胞の生まれ変わりを促進するのは考えものなのです。

    この頃よく耳にするスローライフの意味する所は、超長寿を目指す、副交感神経型社会への礼賛、ということですね。

    私達は、何処から来て、何処へ行く、のでしょうか、ふと立ち止まった秋の夜長でした。



      

  • Posted by 丸山 悦子  at 21:00Comments(2)長寿健康社会

    2010年08月28日

    若返りの薬

    <聖なるハーブ>

    目のさえるような紫色の花を付けて茂っているセージ(シソ科)をしばしば見かけます。

    意外にも、古代より全世界で不老長寿の草として大事にされていた、ということは知られていないようです。

    今でもその防腐効果と香りはハム、ソーセージに使われるそうです。

    ちょっと触れると不思議なことに全身が芳香に包まれます。
    その香気は記憶力を高め、認知症にも良いとのことです。

    頭脳を明晰にするというセージですが日本の政治は如何でしょうか?  

  • Posted by 丸山 悦子  at 07:19Comments(2)長寿健康社会

    2010年08月12日

    失明しても麻酔薬の開発

     <朝鮮朝顔> 
    朝鮮朝顔(曼陀羅華)の花が咲きました。その高貴な香りは何ともいえません。
    しかし毒草ですので要注意です。
    この植物成分を使って江戸時代の医学者、華岡青洲は世界で始めて、乳がん患者の全身麻酔に成功した、とのことです。

    青洲が動物実験を十分やり終わった時は、青洲の妻と母親が競って人体実験に臨み、朝鮮朝顔の毒のゆえに妻は失明してしまいます、それでも夫を鼓舞し続けた、というお話は作家の有吉佐和子が「華岡青洲の妻」を出版して有名となりました。

    小説の視点は夫を支える妻、嫁・姑との確執、封建時代の家制度など、いろいろですが今の時代に通じることもあります。

    今年も一日の命の、はかない美しさを愛でました。  

  • Posted by 丸山 悦子  at 07:03Comments(0)長寿健康社会

    2010年08月04日

    老化の防止

    <アントシアニン>
    ブルーべりーが色づいてきました。最近、アンチエイジング効果や目のために良いことで人気です。心臓病や認知症にも効果があるということです(see ref.)。

    ブルーベリーの皮やいちごは、アントシアニンという赤い色素を沢山含んでいます。
    アントシアニンはポリフェノール化合物の中のフラボノイド類の色素で、強い抗酸化作用があります。
    従って、過食や過度なストレスによって、過酸化状態で痛んだ組織や細胞の悪い状態を緩和してくれるのです。  

  • Posted by 丸山 悦子  at 12:04Comments(2)長寿健康社会