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Posted by たまりば運営事務局 at

2010年11月28日

人工生命、シンシアの将来は?

<執念の賜物>
ベンター博士はベンチャーを立ち上げて15年、この春、ベンター研究所で合成細胞の創生に成功しました(文献参照)。人類史上に残る、偉大な功績とも伝えられました。

彼らは、真生細菌から遺伝子(DNA)を抜き、合成したDNAを入れて、自ら複製、増殖する人工の生命体、愛称・シンシアを創ったのです。

短い合成遺伝子の導入なら、実験室で細菌の形質転換のために使われる通常のテクニックです、が、彼等は桁違いに長い、100万塩基対を入れました。その遺伝子発現のために、一個の配列ミスも許さない緻密な研究を行い、ゲノムエンジニアリングの成功を導いたのです。

さあ、任意の遺伝子を持った細菌が作れるようになったぞ~~。
テロリストを喜ばせてはいけません!

ベンターの、細菌を用いた、萌芽的とも見える合成生命の研究は、ヒトの命も合成することになるのでしょうか?
ちなみにヒトのゲノムは30億塩基対(非遺伝子部分が半分以上)ですから、人工人間は難しそうですね。合成核酸から意味あるゲノムへの道はまだまだ遠いーーー。
しかし、研究者の執念は尋常ではないところがありますから、ブレークスルーが有るかもしれません。

どうしましょう?


補足:
生物は、細胞内に核が有るか無いかによって、真核生物と原核生物に分けられます(図参照)。
私がヒトの歴史で記載(9/29記)したのは、全て真核生物です。その左隅に菌界とあるのは、紛らわしいのですが、細菌(バクテリア)ではなく、きのこやカビの類で、核の構造を持っています。

細菌がこの菌や植物、動物とは異なっている点は、遺伝物質のDNAを囲む構造が無く、細胞質の中でむき出しであること、また細胞膜の外側に細胞壁を持つことなどです(上図を参照)。

なおウイルスに関しては、脳が障害されるポリオウイルスとか日本脳炎ウイルスなどがよく知られ、恐い生物と思いがちです。が、寄生しないと増殖出来ないので生物とみなされません。

<科学にはさまざまなギャップ>
生命を作る、そこに描く方法は私のみならず他の方も、ベンターのように細菌に移植するのではなく、全くすべて人工の、即ちリポゾームのような人工脂質二重層膜に合成遺伝子と幾つかの酵素蛋白質を入れる、ということかもしれません。
でも細胞質が最初に必要だったのですね。

話しは跳びますが、先に、試験管ベービーの技術はノーベル賞になりました。惜しいことに?インキュベーターの中からオギャーとはなりません。細胞が分裂・増殖して分化を遂げて個体を維持するまでには、伺い知れないほどの高いハードルがあるのでしょう。

私は学生時代に、「緑の葉を皮膚に埋め込んで光合成すれば、ご飯を食べないで済む」と言ったら「錬金術師みたいだね」と笑われたものです。が今や、錬金術は、核化学的には可能であることが分かっています。
「不可能なことは無い」と言ったナポレオンも思い出されます。

<宇宙と生命の起源>
私は9月29日のブログにおいて、人類の歴史の図に、137億年前に宇宙の誕生を入れました。
その前は何なのでしょう。
無から有が生じたのでしょうか。

現代量子化学が教える所では、無というものは無い、バーンと新星爆発で素粒子が出来、だんだん重い元素が作られてきた、と説明するようです。そのような無を認識するには、まだ私達の脳は訓練が足りないように思われます。

進化論を受け入れるなら、無生命から出現したという生命の起源を考えざるを得ません。
宇宙の起源のイメージ化に比べれば、既存分子から始める、実験化学を基盤とした生命の起源は、はるかに安心して、その変遷が納得出来ます。生命が、合成核酸から創れたのですから。
そしてなぜか、私はヒトに至るまでの生物の長い歴史を、時空を越えて優しく受け入れられるのです。

<ヒトとはーー>
地球環境をchange出来るのがヒト、いえ、してしまった、のがヒトです。
使い過ぎてしまった地球資源や破壊してしまった自然という、ここ数百年の暴走を?私達は反省するようになり、世界中が一つになって考えよう、と動き始めました。

これまで、テクノロジーを発展させて、豊かな生活を得ました。

遺伝子工学による遺伝子組み換えによって、作物は生産効率をあげられます。そして、原油エネルギーの代替としてバイオエタノールの作成も可能としました。

人類は、細菌やウイルスとの闘いの歴史でもありました。
しかし今や、例えば、感染症の治療では、遺伝子組み換えの蚊によって、沢山のヒトが命を落とす、蚊が媒介するマラリアを絶滅することが出来そうです(参考文献)。

しかしこれらのメリットには、地球の自然を守ること、生態系を保存しよう、という叫びとは、折り合わないことが多々あります。

進歩が孕む功罪をどのようにバランスを取るか、私は、現代人の責任はあまりにも重いと思っています。
  

  • Posted by 丸山 悦子  at 00:38Comments(6)脳神経生化学

    2010年11月14日

    ヘルスケア: カロリー制限で寿命の延長

    <認知症の予防とそのメカニズム>
    日本では超高齢化が進み、老化による脳疾患が増大して、大きな社会問題となっています。

    老化による脳神経系のダメージは、本人の自立した生活を奪うばかりでなく、精神障害も起こしますので、周りの方も大変です。

    未だ、脳機能障害の治療法は解決していませんので、若い時から「予防」することが極めて重要です。

    ところで、脳神経系のダメージは、どのように生じて、どうしたら、防げるのでしょうか。

    老化による脳疾患、パーキンソン病(PD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)および脳梗塞は、主に、酸化ストレスが関与していることが知られています。

    酸化ストレスとは、生体内で生じた活性酸素などによる酸化力が体内の抗酸化力を上回った状態のことです。

    酸化ストレスは、脂質、蛋白質、糖、核酸などを酸化変性させ、細胞機能を障害したり、炎症反応を誘起したりします。

    脳は、脂質に富むため、酸化損傷されやすく、酸化ストレスが亢進しやすい組織なのです。

    従って、いろいろな抗酸化物質や抗炎症物質が含まれている野菜や果物を食べれば、細胞の酸化還元状態の破綻が防御されたり、いち早く修復がなされたりします。

    認知症の予防としては、「食べ過ぎない」、「適度な運動をする」、「野菜や果物を多く摂取する」、という生活習慣の改善が叫ばれています。

    種々の動物実験から、カロリー制限をすると、その最長寿命が延長されて、さらに、生活習慣病、神経変性疾患、ガンなど、さまざまな疾患の発症、進行が抑制されること、が分かってきました。

    では、なぜ、カロリー制限や運動が良いのでしょう。

    <軽いストレスが命を活性化>
    これまでは、カロリー制限の効果として、血糖値が低下して、細胞内のエネルギー産生器官であるミトコンドリアのATP産生が低下し、細胞の酸化をする活性酸素種(ROS: reactive oxygen species)の産生が抑制されるから、と考えられました、が、最近では、カロリー制限は、軽度なストレスとなって、即ち、良い刺激となって、生体が、酸化亢進という悪い環境に立ち向かえる、即ち、生体が持つ適応対応力を高める、と理解されています。

    運動をすれば、ミトコンドリアでの、酸素消費・ATP産生が亢進する結果、必然的にROSの産生は増加して、細胞にダメージを与えます。

    従って、過度の運動は、生体にとって有害です、が、適度な運動は、血流増加による栄養補給のみならず、軽度な酸化ストレスを生体に与えることとなって、機能蛋白質の発現増大などを導きます。

    そして、細胞はより大きな酸化ストレスに対して、抵抗性を得て、準備万端な体制作りが誘導される、というわけです。一粒万倍、備えあれば憂いなし?ですね。

    うつ病や自殺者が後を立たない現代社会は、脳の持久力、いや、耐久力と言いましょうか?筋肉以上に求められそうです。

    <長寿へは、腹五分、運動、そして、ファイトケミカルズ>
    これまでの研究で、認知能力の改善に効果があったものとして、大豆イソフラビン、茶由来のカテキン、ハーブ抽出物、きのこ類、などが報告されています。

    最近よく目にする、ファイトケミカルとは、必須栄養素ではありませんが、欠乏すると、病気になりやすくなる、栄養素のことです。

    野菜や果物に含まれる植物由来の、それ自体が抗酸化能を持つ、アントシアニンのようなポリフェノール類やカロテノイド類などの成分です。酸化ストレスを緩和する力がありますので、疾患の予防や老化抑制に役立つ、といわれます(上図、参照)。

    ストレスと戦うファイト(fight)がある、ファイト(phyto)ケミカルを、日々しっかり取り入れましょう(下図、参照)。

    カナダの砂糖楓から取れるメープルシロップがビタミン、ミネラル、ポリフェノール類が多いとのことです。私は、酸化ストレス予防戦略として、ファイトケミカルが豊富な、アントシアニンの多いブルーベリージャムやメープルシロップを、ヨーグルトに少し掛けることに、しました。

    何はともあれ、生体の酸化還元状態をチェックできる、その評価システムを開発することが、一番の予防戦略ですね。

    <科学的に対処するには>
    細胞は、環境応答への情報伝達をすべく、細胞の酸化還元状態によって、増殖、分化、細胞死、へのルートを決定します。

    アルツハイマー病やパーキンソン病の脳では、不可逆的に酸化が進んだ酸化物質が見つかっています。

    問題は、脳の神経細胞は、ほぼ全てが分化が終結していて、もう分裂・増殖しないことです。従って、ストレス過多で酸化ダメージを受けると大きな痛手です。

    脳は、送られた多量の血液から、栄養成分を得て、精巧に機能しています。その機能の維持のためには、常日頃から、ファイトケミカルや多彩な食品を合わせ摂取することが重要なのです。

    自分の血液などを分析して、栄養の取り方や体の酸化ストレス亢進の状態がチェック出来て、数字で記録されたら、どんなに素晴らしいでしょうか。

    今後の研究者の役目ですね。しかし、新規技術の創出には、高額な分析機械の購入から始めなければならないのです。

    私は、人々が、ストレスや脳機能関連物質の異常をセルフチェック出来る、「脳・アンシン・キット」の開発を目指して、目下、奔走しています。
      

  • Posted by 丸山 悦子  at 22:45Comments(2)長寿健康社会

    2010年11月01日

    紫式部はアントレプレナー第一号?

    <紫式部のライバルはーー>
    秋雨で紫式部がたわわに、実がいっそう紫を増しました。

    園芸店で売られている紫式部は、小式部(和泉式部の娘)が本名で、山野で見かける、実が少なく質素な感じの方が本当の紫式部とのことです。

    清少納言が紫式部のライバルのように思われますが、実は、宮廷で同じ中宮彰子に仕え、既に和歌の才能を発揮していた和泉式部(36歌仙の一人)が、紫式部のライバルでした(図、参照)。

    いずれも娘をつれてのご奉公ですが、和泉式部親子は、貴公子達の人気の的で、恋多き女性、として有名です。

    思えば、私は、「古典はコテ~ン、コッテン」とか言いながら、文系組に教科書を抱えて移動、しかし授業中の頭の中は、いつも方程式の解を求めていました。が、どうでも良いことは、しっかり頭にあります。

    紫式部は不美人、頼りの父親も越前に下向させられ、晩婚に、そして高齢出産。
    高齢な夫は直ぐ亡くなりシングルマザーに、こういうわけで、頭は良いのだが職が見つからないーーなどなど

    ところが、紫式部は小さい時から物覚えが良く、当時男子だけの学問であった漢籍に長けていたため、名が知れ渡り、やがて宮廷の教育係りへと参内することとなります。

    <日本一の権力者、藤原道長の宮廷サロンファンド>
    藤原道長は、その権力を文化の育成にも大いに発揮します。

    時は、摂政関白の時代、朝廷政治にも参入すべく藤原道長は、一条天皇には、中宮定子という后がいるにもかかわらず、自分の長女の彰子(しょうし)を、一条天皇の后として入内させます(図、参照)。

    道長は、枕草子で有名な才女、清少納言を抱えている中宮定子に負けじと、中宮彰子には、漢詩、漢学に目聡い、紫式部を房のブレインとしてスカウトするのです。

    宮廷に仕える、中、下流貴族出身の女房達は、家督の栄光のためにも、また女官へのステップアップのためにも、男性の学問である仏典や漢詩に研鑽します。

    そして、漢語を日本でアレンジした、仮名、で和歌やものを書きはじめ、競って能力をアピールすべく、女性が元気な時代を作りはじめたのです。

    こうして平安中期(1000年)には、女流日記文学が花開きます。

    宮廷の様子を書いた清少納言の「枕草子」、藤原道綱の母による、多くの妻を持つ夫(兼家)への長嘆息であり、通い婚制度への批判ともみられる自伝「蜻蛉日記」、菅原孝標の娘による、源氏物語をまねた回想録的フィクション小説である「更級日記」、宮廷の恋愛小説である「和泉式部日記」があります。

    これらは日記と言えども、今の日記にあらず、必ずや女性の立場に、視点がおかれています。

    さて、紫式部の書いた「源氏物語」は、と言いますと、道長は、紫式部の才を認めていましたので、女房の部屋にやってきては作品を促します。

    この点が、あふれ出る思いを綴る、他の女性の作品と違います。

    当時の恋愛は、貴婦人は、人前には顔を見せないことが奥ゆかしいことでしたので、中将たちはその後姿に恋焦がれ、女房にキューピット役を頼む、というパターンでした。

    ですから、女房の間では、あらゆる貴公子達の恋愛の話に尽き果つことがありません。

    貴公子、光源氏の恋愛話は、当然ながら、女房の間で人気の的。その面白楽しさを伝えようと、書き写されて、読み回しもなされます。

    しかし、紙や墨は高価なもので、簡単には手に入りません。そのサポーターとなったのが財ある道長でした。

    物書き、と言うのは、自分が書きたいから書く、はずです。

    が、紫式部は特化した才能と、道長というパトロンを得て、自ずと文筆の新起業家となったに違いありません。

    <宮中キャリアーにパトロンの後押し>
    道長は、「あっち(中宮定子)が随筆(枕草子)なら、こっち(娘の中宮彰子)は小説だ(源氏物語)!」とばかりに、房を増設したり、才女には、その世話係りまでも雇ってあげたりして、思う存分執筆の仕事をさせてあげたようです。

    むろん、宮廷の房、というサロンが、才女達の作品発表の場として、拡充されました。

    遂に!!サロンには、文学が趣味の一条天皇も足繁く通い始めーーー道長はシメシメ

    紫式部は、こうして権力者達に気に入られ、執筆に拍車が掛かります。才能あるが故ですね。

    54帖という世界一長い小説となったのは、道長が紫式部に「もっと書け、もっと書け」とーーー、さもありなんです。

    そういえば、研究・論文の仕事もまさに個人事業主的です。

    パトロン道長のような研究室もあったかも~~

    さて、一昨年が、源氏物語千年紀。

    夜もすがらの王朝貴族たちの雅な?社会と政略闘争の背後に、私は、女性新起業家の捗捗しい台頭を感じます。

    <起業の成功>
    紫式部に問はずとも、起業家の成功に必要なものは、才能、ファンド、マーケット、ですね。

    ファンドといえば、欧米では、寄付者の名の付いた文化施設や大学のファウンデーションが沢山あります。
    日本の隠れ大金持ちの、社会貢献事業や文化創出のための寄付・基金への志しは、藤原道長と較べずとも、希薄と言わざるをえません。

    エンジェルさんが増えて欲しいですね。

    えっ、「早く、自分で起業を成功させて、そうなれ!」、天の声??かしら、んん

      

  • Posted by 丸山 悦子  at 21:42Comments(4)ベンチャーはアドベンチャー