2013年04月26日
“博士が愛した数式”は、

<ゼロは満ち足りた世界!>
数年前、私はテレビでの邦画"博士が愛した数式”の公開CMに思わず目が注がれました。
主人公である老数学者は、なんと若かりし頃(私も)に、私が愛した?「ルビーの指環」を自ら作曲して歌って一斉を風靡した歌手だったのです。
老数学者は交通事故に遭って、記憶が数十分しか持ちません。しかしオイラーの公式は決して忘れません。
オイラー(1707-1783,スイス)の公式(図、左上)は物理学者のファインマン(1918-1988,米)に“our jewel”と言わしめた美しい数式です。
博士は身近のひとびとをオイラーの等式(図、左上)の文字になぞらえます。それらは無限の小数である無理数と虚数です。
自然対数の底である自分(e)の肩に乗る母屋に住む不倫相手(虚数、i)、そこに加わる家政婦(パイ、π)、ぎこちない空気です。
ある日、家政婦の子供のルートという少年(+1)が現れて博士の心は少年と通うようになります。
博士はルート君が来て、オイラーの公式が自分がこよなく愛するゼロになった、とオイラーの公式でθがπになった時の等式(図、左上)に幸せを感じるのでした。
<エクセルで描くオイラーの公式>
オイラーの公式におけるθの単位はラジアンです。
公式でθが家政婦のπになった時の右辺の計算は、三角関数を勉強中の高校生以外はsinπやcosπの値がすぐ出てこないかもしれません。
心配ご無用です!エクセルなら最初のセルに=RADIANS(A2)として下方にドラッグすれば度からラジアンへ変換されます。
三角関数の値はC2のセルに=COS(B2)、D2に=SIN(B2)の関数式を書くによって値が得られます(図の表)。
cosπ+isinπが-1(表のB6)となるのでe^iπ+1=0が得られることとなります。
さて、エクセルは複素数の計算も瞬時にしてくれます。
cosθを実部,isinθを虚部としてオイラーの公式の左辺を計算してくれるのが関数COMPLEXです。
これも最初のセルに=COMPLEX(C2,D2,”i”)をいれてドラッグします。
また複素面(図、左下)においてz(cosθ、isinθ)の絶対値z、|cosθ+isinθ|を計算するのがIMABSという関数式です。
表のようにオイラーの公式は複素三角関数の絶対値が1となり,またもや美しい結果に出会えました。
図、右上はθ(度)を横軸にcosθと(青)isinθ(赤)、IMBASによる|z|(紫)を作図しました。
なおこの公式を時間変化で視覚化した立体画像を利根川先生から頂きました。青線は実数成分のコサイン波、赤線は虚数成分のサイン波、緑線が左辺の指数関数の虚数乗、を表わしています。
なぜか私達は波模様に安堵を感じます。
<世界は波動で満ちている!>
太陽光も、ラジオも、携帯も電子レンジもすべて波動の恩恵ですから私たちは波の中に生きているといっても過言ではありません(本ブログ)。
物質のふるまいをシュレジンガー(1887-1961,オーストリア)は波動関数として表しました。
音の波は健康に関係が深いようです。
音楽療法やタンゴのダンス療法が欧米で盛んとなっています。脳波が変わるのでしょうか。
その認知症予防効果については、音調による交感神経と副交感神経のバランス効果と互いを支えるダンスの踊りによるオキシトシン(ホルモン)放出増大のなせる業、ともいわれています。
日本人だから「オイラはよさこい節ダイ~」も・・アリかもしれませんね。
ところで音を‘見る’ものに出来ないものでしょうか。
<楽譜のフーリエ表記!>
フーリエ(1768-1830,仏)は全ての波は三角関数の波成分に分けられると考えました(図、中央)。
複音ハーモニカは上と下の段ではわずか周波数が異なる音が出て、日本的で哀愁のある音色が特徴です。舌を使うといろいろなハーモニーを奏でることができ(図、右下)、舌先を動かすタンギング奏法やマンドリン奏法もあります。
佐藤秀廊先生が昭和2年の世界ハーモニカ大会に渡欧して優勝なさった時に、その日本式複音ハーモニカを聴いた外国人達はその音の複雑さに驚き、何枚の舌で演奏したのか見せろ、と口の中を覗いたそうです。
その位複雑な音を出せる素敵な楽器なのですが簡単には上達しません。正しいハーモニーになっているのかきちんと周波数成分に分析して模範との比較がモニターとして目で確認しながら練習できれば耳に障害のある方のみならずもっと多くの方に楽しんで頂けるのではないか、と思います。
演奏は自・他の脳活動が変わり脳波も脳磁場も変わるように感じます。
最近、脳磁界の微量の変化を周波数解析できるようになりました。
<脳波や脳電磁波のフーリエ解析>
波動は複素数の波ともいえます。
波はフーリエ変換すると複素指数関数である時系列データから複素三角関数の和に表されます。そこではオイラーの公式が役立って、波動関数が代数的に計算出来るようになるのです。
このフーリエ変換によって脳磁界波から脳磁図が得られます。
近年は精神疾患の増大が著しく診断も治療法も混迷しています。統合失調症(精神分裂病)とうつ病との区別でも困難が多々です。
神経細胞群の活動の異常を脳電磁波の異常として検出して、波成分に分けて分析すれば疾患の非侵襲的な良いマーカーです。
健常者と統合失調症、うつ病患者で脳電磁波の高速フーリエ変換を行い、α、β、δ、θ波を比較し定量的に計測しました。統合失調症とうつ病ではいくつかの脳表面部位でδ波による違いがあることが分かりました(参考の表2)。
診断がつくと治療法も適切となります。
今後、更なる精度を求めてノイズの除外方法、統計・確率の計算やパラメーターの解析法、そして周波数域の拡大などの研究が進められるとより微細な機能変化の解析が可能となることでしょう。
