2011年05月11日
運動すれば頭がよくなる!
<BDNF(脳由来神経栄養因子)は脳細胞を元気にする>
平均寿命が95、100歳も目前ですね。
何と言っても脳の健康が重要課題です。
なぜなら私達の脳は、歳をとるほどに神経細胞が死んでいき、萎縮し、認知力の低下が進むからです。
最近、エアロビクスによって海馬の萎縮が抑えられることが報告されました(参考)。
運動すれば記憶や学習の脳の要である海馬の機能が向上することがわかったのです。
そして血液中でBDNFが上昇することも見出されました。
BDNFは神経細胞で合成され、分泌されます。
そして他の神経細胞シナプスの受容体に結合して、その細胞の電位をあげで活性化するのみならず、神経細胞の生存に重要な遺伝子を発現させるべくスイッチとなります。
すなわちBDNFは神経細胞の成長と分化そして神経ネットワークの維持という、まさに神経細胞のサバイバル因子として働きます。
マウスの実験においても運動をさせると海馬でBDNFが増大すると報告されました。
神経のシナプスは多いほど脳は良く働きます。
有酸素運動によって新しい神経細胞が生み出されそしてまた、複雑な動きの運動をさせると神経シナプス間の結びつきが緻密になったのでした。
ですから運動をすれば、血管や筋肉から種々の細胞成長因子が放出されて心肺が強くなるのみならず(本ブログ)、脳ではBDNFの合成が高まり記憶力、頭の回転、果ては認知症が防御されるというわけです。
興味深い知見として、BDNFのSNP(一塩基多型)(本ブログSNPの説明)と精神疾患の関連があります。
蛋白質に翻訳されたばかりのBDNFの配列において、66番目のヴァリンがメチオニンに変異するとBDNF分泌能が低下して神経機能が脆弱化する、ということが報告されました。
そこで種々の神経疾患でもこの変異多型が背景にあるのではないかと調べられました。
うつ病や多遺伝子疾患と考えられるパーキンソン病やアルツハイマー病、肥満症などでも病態の背景要因であることが報告されています。
私のBDNF遺伝子のSNPはどうかも気になってきます。
日本人のBDNFのVal66Metは白人に比べ高く人口比30%くらいと、高比率のようです。
ところで最近、このSNP以外のリスク要因が見つかりました。
<自殺とBDNF遺伝子>
自殺者のBDNF遺伝子を調べたところ、ウエルニッケ野(本ブログの脳の図)では、BDNF遺伝子配列上流のプロモーター領域(本ブログ、遺伝子発現の模式図)のDNAがメチル化という修飾がなされていることが見つかったのです(参考)。
今後BDNFについては、SNPであるVal66Metなどの多型解析に加えて、どのような精神状態や環境でDNAのメチル化が起こるのか後天的修飾の機作解明などが重要となりそうです。
このプロモーターDNAの修飾があると、BDNF遺伝子自体に変異はなくとも遺伝子が読み取られる時に転写の効率が落ち、BDNF蛋白質が充分産生されず、そのため神経機能が充分働けない、と考えられます。
<proBDNF(前躯体)とBDNF(成熟型)>
うつ状態を回避することは自殺者を減らすためにも早急な社会の課題です。
BDNF蛋白質の血中でのレベルは、Val66Metのうつ病患者で低下しており、抗うつ剤や運動などの治療によって上昇することが報告されました。
しかしこの時のBDNFは成熟型であって前躯体から切断されています。従って66番目のアミノ酸はもはや無いのです(図)。
そこで、その塩基変異は問わずとも、BDNFのレベル変化がうつ症状やストレス症状改善に指標となるのではないか、とメンタルヘルスの観点からの研究が進められています。
また、うつ病でBDNFが減少する時は切断される前の前躯体proBDNFが増大し、脳や血中の両者のバランスの変化が病態を左右するのではないか、またそれぞれの分子が神経細胞において相反する役割があるのではないか、との考えの研究もなされました(参考)。
うつ状態でのBDNFレベル低下の機作は、蛋白質分解酵素によって切断されて機能するBDNF(数ng/ml血液)と更に低レベルと予想されるその前躯体や切り離された断片(図、左)のそれぞれが検出、測定可能となって、さらにこれらの因子と結合して情報を繰る分子が明らかになれば解明されそうです。
<痴呆にならない確率を上げるには>
将来はお金を掛ければ、何十万個?という自分だけの遺伝子上の個性を調べることが出来、そしてBDNFのVal66Metに加えて、あらゆるDNA変異のリスクファクター情報が手に入れられそうです。
ところであなたの健康を管理する意志はどこからくるのでしょう。
やはりそれは、脳の神経シナプス可塑性!となりましょうか。
それなら自らの努力でBDNFを産生させ、BDNFを肥料?としてシナプスの豊富な神経細胞ネットワークを育てあげること、ということに尽きそうですね。
今日もしっかり空気を吸って、一万歩です~~
平均寿命が95、100歳も目前ですね。
何と言っても脳の健康が重要課題です。
なぜなら私達の脳は、歳をとるほどに神経細胞が死んでいき、萎縮し、認知力の低下が進むからです。
最近、エアロビクスによって海馬の萎縮が抑えられることが報告されました(参考)。
運動すれば記憶や学習の脳の要である海馬の機能が向上することがわかったのです。
そして血液中でBDNFが上昇することも見出されました。
BDNFは神経細胞で合成され、分泌されます。
そして他の神経細胞シナプスの受容体に結合して、その細胞の電位をあげで活性化するのみならず、神経細胞の生存に重要な遺伝子を発現させるべくスイッチとなります。
すなわちBDNFは神経細胞の成長と分化そして神経ネットワークの維持という、まさに神経細胞のサバイバル因子として働きます。
マウスの実験においても運動をさせると海馬でBDNFが増大すると報告されました。
神経のシナプスは多いほど脳は良く働きます。
有酸素運動によって新しい神経細胞が生み出されそしてまた、複雑な動きの運動をさせると神経シナプス間の結びつきが緻密になったのでした。
ですから運動をすれば、血管や筋肉から種々の細胞成長因子が放出されて心肺が強くなるのみならず(本ブログ)、脳ではBDNFの合成が高まり記憶力、頭の回転、果ては認知症が防御されるというわけです。
興味深い知見として、BDNFのSNP(一塩基多型)(本ブログSNPの説明)と精神疾患の関連があります。
蛋白質に翻訳されたばかりのBDNFの配列において、66番目のヴァリンがメチオニンに変異するとBDNF分泌能が低下して神経機能が脆弱化する、ということが報告されました。
そこで種々の神経疾患でもこの変異多型が背景にあるのではないかと調べられました。
うつ病や多遺伝子疾患と考えられるパーキンソン病やアルツハイマー病、肥満症などでも病態の背景要因であることが報告されています。
私のBDNF遺伝子のSNPはどうかも気になってきます。
日本人のBDNFのVal66Metは白人に比べ高く人口比30%くらいと、高比率のようです。
ところで最近、このSNP以外のリスク要因が見つかりました。
<自殺とBDNF遺伝子>
自殺者のBDNF遺伝子を調べたところ、ウエルニッケ野(本ブログの脳の図)では、BDNF遺伝子配列上流のプロモーター領域(本ブログ、遺伝子発現の模式図)のDNAがメチル化という修飾がなされていることが見つかったのです(参考)。
今後BDNFについては、SNPであるVal66Metなどの多型解析に加えて、どのような精神状態や環境でDNAのメチル化が起こるのか後天的修飾の機作解明などが重要となりそうです。
このプロモーターDNAの修飾があると、BDNF遺伝子自体に変異はなくとも遺伝子が読み取られる時に転写の効率が落ち、BDNF蛋白質が充分産生されず、そのため神経機能が充分働けない、と考えられます。
<proBDNF(前躯体)とBDNF(成熟型)>
うつ状態を回避することは自殺者を減らすためにも早急な社会の課題です。
BDNF蛋白質の血中でのレベルは、Val66Metのうつ病患者で低下しており、抗うつ剤や運動などの治療によって上昇することが報告されました。
しかしこの時のBDNFは成熟型であって前躯体から切断されています。従って66番目のアミノ酸はもはや無いのです(図)。
そこで、その塩基変異は問わずとも、BDNFのレベル変化がうつ症状やストレス症状改善に指標となるのではないか、とメンタルヘルスの観点からの研究が進められています。
また、うつ病でBDNFが減少する時は切断される前の前躯体proBDNFが増大し、脳や血中の両者のバランスの変化が病態を左右するのではないか、またそれぞれの分子が神経細胞において相反する役割があるのではないか、との考えの研究もなされました(参考)。
うつ状態でのBDNFレベル低下の機作は、蛋白質分解酵素によって切断されて機能するBDNF(数ng/ml血液)と更に低レベルと予想されるその前躯体や切り離された断片(図、左)のそれぞれが検出、測定可能となって、さらにこれらの因子と結合して情報を繰る分子が明らかになれば解明されそうです。
<痴呆にならない確率を上げるには>
将来はお金を掛ければ、何十万個?という自分だけの遺伝子上の個性を調べることが出来、そしてBDNFのVal66Metに加えて、あらゆるDNA変異のリスクファクター情報が手に入れられそうです。
ところであなたの健康を管理する意志はどこからくるのでしょう。
やはりそれは、脳の神経シナプス可塑性!となりましょうか。
それなら自らの努力でBDNFを産生させ、BDNFを肥料?としてシナプスの豊富な神経細胞ネットワークを育てあげること、ということに尽きそうですね。
今日もしっかり空気を吸って、一万歩です~~
Posted by 丸山 悦子 at 23:54│Comments(0)
│脳神経生化学