2012年01月31日
‘禿げる’メカニズム
<‘ピカッ’るヘアー産業>
最近よく「泳いでも落ちない、ザー!」とか「載せるだけ、簡単ウイッグ!」のCMを見かけます。
ヘアーケア産業で市場拡大が起きている、とのことです。
マイクロスコープでの微細な観察と適切な養生のためには、皮膚や育毛の化学、髪の再生や移植の技術、人工毛髪の作製など、周辺テクノロジーも活発化するようです。
実はそれがおしゃれのブーム、ということなら良いのですが、どうもその背景はハゲや薄毛が若年化した、ためらしいのです。
そう言われてみれば、あのひとも、このひとも若いのに・・・・・
昔は、薄毛や生え際の後退は母方からの遺伝とか、聞きましたがーーーそのメカニズムは解明されたのでしょうか?
<勉強し過ぎるとハゲる、は本当か>
薄毛や脱毛は本質的には、毛包の縮小すなわち毛乳頭、毛根母細胞(図、左)の機能低下によって起こります。
ですから毛細血管から充分な栄養や酸素が行かなくなれば毛包をはじめ母細胞の成長がやがて止まり、抜け落ちます。
勉強で頭を使い過ぎると脳内に血液が行ってしまい抹消である毛根付近は貧血気味?それで禿げやすくなる、さも有りなむ、ですね。
最近、皮脂腺からの過剰の脂質による悪影響が指摘されています。
肉食に偏った生活が原因ともいわれます。
脂質が毛穴を塞ぎ、やがて過酸化脂質により皮膚がダメージを受け雑菌の繁殖場となり、毛根細胞は障害され、成長がストップ、薄毛化です。
ちなみに表面に出てくる髪自体は死んだ細胞です。毛包の中で毛母細胞が分裂成長するのです。
また白髪の仕組みは毛髪の成長とは異なります。毛母細胞に隣接して、毛母細胞にメラニン色素顆粒を渡す色素細胞(図)が死滅したり機能異常をおこしたりして白髪になるのです。
タバコの害は明らかのようです。
<薄毛の分子メカニズム>
何といっても薄毛や脱毛の分子機構の主人公は男性ホルモン(テストステロン)、いいえ、活性型男性ホルモンであるダイハイドロテストステロン(DHT)です。
それとX染色体上に遺伝子があるアンドロゲン受容体ですね。
男性型脱毛症の研究から、過剰のDHTが‘根腐れ’を導く、と考えられました。
血液からのテストステロンは毛根では5α-リダクテースによってDHTとなって細胞内でのアンドロゲン受容体との結合能力が著しく上昇します。そしてその複合体は細胞の核内で毛母細胞が成長するために必要な成長因子の遺伝子発現を抑制してしまうのです。
5α―リダクテースについては、糖や高脂肪食の取りすぎが皮脂やこの酵素の増大をもたらすのでDHTが増大して脱毛が起きることが分かってきました。
食生活という環境が重要視されはじめた所以ですね。
また男性脱毛症の遺伝子変異の研究から脱毛症のヒトでは、アンドロゲン受容体遺伝子上にあってこの受容体のレベルを決めるグルタミンCAGのリピート数が少ない、という報告があります。
とにかく5α―リダクテースやDHT、アンドロゲン受容体のレベルの増大が元凶なのですね。
それにしてもなぜ筋肉増強で有名な同化的作用を持つ男性ホルモンが毛細胞では増殖抑制なのでしょう。そして5α―リダクテースもアンドロゲン受容体も同じように存在するヒゲや前立腺腫ではなぜ反対である増殖促進となるのでしょうーー
さらに不思議なことに5α―リダクテースの阻害剤やアンドロゲン受容体の拮抗剤は抗がん剤として使われ、その副作用は毛髪の脱毛です。そしてその副作用の出方はヒトによってかなり異なる、らしいのです。これまたなぜなのでしょう。
<マイクロRNAの増大と脱毛症>
最近、マイクロRNA(miRNA)は20-25塩基と短い一本鎖のRNAで蛋白質発現の制御をすることが分かって来ました(参考)。
図の右にmiRNAの合成と作用の仕組みを描きました。
miRNAは細胞の核内でDNAから前駆体として転写され、細胞質でmiRNAに切断されるとmRNAに相補的に結合して蛋白質の翻訳を阻止します。
Goodarzi HRらは男性型脱毛症と正常のヒトから毛乳頭の細胞を採取して培養し、まず遺伝子で発現の違うものを調べたところ脱毛症では30個の遺伝子の発現が上昇しているのを見つけました。
次にデータベース情報から推定され得るmiRNAを選び出し、リアルタイム-PCR の方法で毛乳頭細胞でのレベルの違いを調べました。その結果mir221,,mir125b,mir106b,mir410の4個が3-4倍も対照よりレベルが高く、優位差(P<0.05)がありました (参考)。
ちなみに前から3個のmiRNAは前立腺がんでも上昇しているmiRNAでした。
今後これらのmiRNAがどのような遺伝子の発現を制御しているのか詳細に研究して細胞ごとの仕組みが解明されると、より効果的な発毛・育毛剤さらに抗がん剤の開発までも期待されます。
さて女性の悩みについてです。女性は年齢とともに頭頂部の薄毛に悩むようになると思っていました。がどうも女性ホルモンのエストロゲンレベルの低下による更年期とは関係なく、30-40歳台で太さや密度の変化が激しいのです(参考)。解明して欲しいですね。
どうも薄毛の若齢化は男女ともに、加齢による性ホルモンの低下(参考)とは関係がなさそうです。
過剰栄養と社会の複雑化によるストレスが毛髪のダメージをもたらしている、といわれています。
若ゲの至り、とならないようにまずは生活習慣をきちんとしましょう。
以前、花屋さんの片隅の「ご自由にどうぞ」と書かれた缶の中でぺちょんとしていた小菊です。
庭の隅に挿しておいたところいつの間にか元気イッパイに
ヒカっています。。
こちらは挿すだけで幾らでも殖えるのですが~~
最近よく「泳いでも落ちない、ザー!」とか「載せるだけ、簡単ウイッグ!」のCMを見かけます。
ヘアーケア産業で市場拡大が起きている、とのことです。
マイクロスコープでの微細な観察と適切な養生のためには、皮膚や育毛の化学、髪の再生や移植の技術、人工毛髪の作製など、周辺テクノロジーも活発化するようです。
実はそれがおしゃれのブーム、ということなら良いのですが、どうもその背景はハゲや薄毛が若年化した、ためらしいのです。
そう言われてみれば、あのひとも、このひとも若いのに・・・・・
昔は、薄毛や生え際の後退は母方からの遺伝とか、聞きましたがーーーそのメカニズムは解明されたのでしょうか?
<勉強し過ぎるとハゲる、は本当か>
薄毛や脱毛は本質的には、毛包の縮小すなわち毛乳頭、毛根母細胞(図、左)の機能低下によって起こります。
ですから毛細血管から充分な栄養や酸素が行かなくなれば毛包をはじめ母細胞の成長がやがて止まり、抜け落ちます。
勉強で頭を使い過ぎると脳内に血液が行ってしまい抹消である毛根付近は貧血気味?それで禿げやすくなる、さも有りなむ、ですね。
最近、皮脂腺からの過剰の脂質による悪影響が指摘されています。
肉食に偏った生活が原因ともいわれます。
脂質が毛穴を塞ぎ、やがて過酸化脂質により皮膚がダメージを受け雑菌の繁殖場となり、毛根細胞は障害され、成長がストップ、薄毛化です。
ちなみに表面に出てくる髪自体は死んだ細胞です。毛包の中で毛母細胞が分裂成長するのです。
また白髪の仕組みは毛髪の成長とは異なります。毛母細胞に隣接して、毛母細胞にメラニン色素顆粒を渡す色素細胞(図)が死滅したり機能異常をおこしたりして白髪になるのです。
タバコの害は明らかのようです。
<薄毛の分子メカニズム>
何といっても薄毛や脱毛の分子機構の主人公は男性ホルモン(テストステロン)、いいえ、活性型男性ホルモンであるダイハイドロテストステロン(DHT)です。
それとX染色体上に遺伝子があるアンドロゲン受容体ですね。
男性型脱毛症の研究から、過剰のDHTが‘根腐れ’を導く、と考えられました。
血液からのテストステロンは毛根では5α-リダクテースによってDHTとなって細胞内でのアンドロゲン受容体との結合能力が著しく上昇します。そしてその複合体は細胞の核内で毛母細胞が成長するために必要な成長因子の遺伝子発現を抑制してしまうのです。
5α―リダクテースについては、糖や高脂肪食の取りすぎが皮脂やこの酵素の増大をもたらすのでDHTが増大して脱毛が起きることが分かってきました。
食生活という環境が重要視されはじめた所以ですね。
また男性脱毛症の遺伝子変異の研究から脱毛症のヒトでは、アンドロゲン受容体遺伝子上にあってこの受容体のレベルを決めるグルタミンCAGのリピート数が少ない、という報告があります。
とにかく5α―リダクテースやDHT、アンドロゲン受容体のレベルの増大が元凶なのですね。
それにしてもなぜ筋肉増強で有名な同化的作用を持つ男性ホルモンが毛細胞では増殖抑制なのでしょう。そして5α―リダクテースもアンドロゲン受容体も同じように存在するヒゲや前立腺腫ではなぜ反対である増殖促進となるのでしょうーー
さらに不思議なことに5α―リダクテースの阻害剤やアンドロゲン受容体の拮抗剤は抗がん剤として使われ、その副作用は毛髪の脱毛です。そしてその副作用の出方はヒトによってかなり異なる、らしいのです。これまたなぜなのでしょう。
<マイクロRNAの増大と脱毛症>
最近、マイクロRNA(miRNA)は20-25塩基と短い一本鎖のRNAで蛋白質発現の制御をすることが分かって来ました(参考)。
図の右にmiRNAの合成と作用の仕組みを描きました。
miRNAは細胞の核内でDNAから前駆体として転写され、細胞質でmiRNAに切断されるとmRNAに相補的に結合して蛋白質の翻訳を阻止します。
Goodarzi HRらは男性型脱毛症と正常のヒトから毛乳頭の細胞を採取して培養し、まず遺伝子で発現の違うものを調べたところ脱毛症では30個の遺伝子の発現が上昇しているのを見つけました。
次にデータベース情報から推定され得るmiRNAを選び出し、リアルタイム-PCR の方法で毛乳頭細胞でのレベルの違いを調べました。その結果mir221,,mir125b,mir106b,mir410の4個が3-4倍も対照よりレベルが高く、優位差(P<0.05)がありました (参考)。
ちなみに前から3個のmiRNAは前立腺がんでも上昇しているmiRNAでした。
今後これらのmiRNAがどのような遺伝子の発現を制御しているのか詳細に研究して細胞ごとの仕組みが解明されると、より効果的な発毛・育毛剤さらに抗がん剤の開発までも期待されます。
さて女性の悩みについてです。女性は年齢とともに頭頂部の薄毛に悩むようになると思っていました。がどうも女性ホルモンのエストロゲンレベルの低下による更年期とは関係なく、30-40歳台で太さや密度の変化が激しいのです(参考)。解明して欲しいですね。
どうも薄毛の若齢化は男女ともに、加齢による性ホルモンの低下(参考)とは関係がなさそうです。
過剰栄養と社会の複雑化によるストレスが毛髪のダメージをもたらしている、といわれています。
若ゲの至り、とならないようにまずは生活習慣をきちんとしましょう。
以前、花屋さんの片隅の「ご自由にどうぞ」と書かれた缶の中でぺちょんとしていた小菊です。
庭の隅に挿しておいたところいつの間にか元気イッパイに
ヒカっています。。
こちらは挿すだけで幾らでも殖えるのですが~~
Posted by 丸山 悦子 at 23:08│Comments(0)
│脳神経生化学