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2012年03月18日

有性生殖は超えられるのか

<春遠からじ・・・>
有性生殖は超えられるのか今年は100年来の厳冬とのこと、鳥たちはいつになく餌探しに必死です。
赤い実は、千両も万両も黒鉄モチももう食べ尽くされました。

見慣れぬキジバトのカップル(写真)も枯れた芝生に何があるのか忙しくつっついています。

有性生殖は超えられるのかこの黒鉄もちの木(写真)は小さいときから秋になると実を沢山つけます。

黒鉄もちは雌雄異株とのことです。さらに驚くことに単為結実性といって受粉しなくとも実がなるのだそうです。
メスだけの世界なのですね~

受粉無し、ということですから種がない、鳥が食べて運んでくれても遺伝的多様性が得られません!!

植物ではこの単為結実性が強いものが茄子やきゅうり、みかんや種無し葡萄、柿、と野菜や果物に多いですね。生殖兼備?の多才が羨ましい・・・・

この単為結実性は食べるときに種を出さないで済みますので人間には好都合のことです。

人間が毎年同じ味の美味しいミカンやオレンジを食べ続けて来られたその仕組みは、接ぎ木とその寿命の長さ、そしてどうやら、受粉して種が出来た場合でも、その胚の中に母親と全く同じ遺伝子を持った胚も出来てそれが育っていくことによるようです。元親と全く同じ遺伝子の子供なので同じくまた美味しいミカンが付くのですね。

動物の胚からも雌が単独で子供を作れるでしょうか?

マリアさまだけには進化(本ブログ)が微笑んだのでしょうか!!

有性生殖は超えられるのか<哺乳類は単為生殖が出来るか>
有性生殖をする私たちは体細胞の核内には母由来と父由来の2対の染色体(22対と性染色体XXかXY)を持ちます。
生きていく上で必要な分子を得るために、決まったaかA(図、左上)の遺伝子からタンパク質を合成していくのです。
ひとつの細胞では遺伝子が分裂するごとに生涯同じ親由来遺伝子が発現するように胚形成の初期にマークされるのです。

ところが染色体のある場所では(図の×と○、◎)、母由来で決まって発現する遺伝子(○)が、または父由来でしか発現しない遺伝子(◎)があり、前もって決まっていて世代で変わりません。まるで刷り込まれているようなのでこの仕組みをゲノムインプリングといいます。

インプリングされている遺伝子は現在100個以上わかってきました。それらの遺伝子は受精卵の発達に重要な分子を合成する情報をもっているので父由来もしくは母由来だけということになると発生が出来なくなるのです。
まさに有性生殖の妙味です。

ではどのようにしてDNAは刷り込み、という特定の機能を持つのでしょうか。
それは、DNAはアデニン(A),チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という塩基の連なり具合によって遺伝情報を表すことが出来るのですが、刷り込み機構ではシトシンをメチル化という化学修飾をすることによって対の遺伝子とは違う読み取りをおこすのです(図の右上)。

DNAだけでなくDNAが巻きついているヒストン蛋白質の修飾やRNAもインプリンテイング機構に関与しているかもしれません。

哺乳類のみが持つインプリンテイング機構の詳細はエピジェネティクスという発生学の新規領域で解明が期待されています。

ではいったい、どの遺伝子修飾がどう必須なのかまったく未知の段階なのに世界をアッと言わせた羊の体細胞クローンであるドリーちゃんはどうやって生まれたのでしょうか。

<体細胞クローンペット産業の失敗>
体細胞の遺伝子は受精卵から卵割していきそれぞれの組織へと分化するために各卵割細胞の遺伝子が独特に修飾されていきます。そこでドリー誕生では体細胞を初期化という操作をして修飾をはずして分化する前のパターンに近付けたのでした(図の右下)。当然ながらインプリンテイング領域の修飾は常に変わりません(図の左下)。

元の動物(ドリーの母)と全く同じ遺伝子を持って生まれたドリーの出生は、偶然を越えた快挙とも思えるほどに成功率が低い再現性の難しい実験のようです。彼らの初期化の方法では、多数の遺伝子のメチル化や脱メチル化、シス、トランスに働くであろう因子などが必要と思われるそのメカニズムのコントロールは至難の業と思われるからです。

私は二匹をまじと見つめて顔を比較してしまうのでした、どのくらい双子なの?

と申しますのはその後に活発化した体細胞クローンペット産業で猫や犬が思ったようには元の動物と同じにならなかったからです。毛の色や模様そして性格や記憶力などはストレスや環境などの後天的な影響で変わるからです。

違う環境で育った一卵性双生児は、遺伝子が同じでクローンといえどもかなり異なっているということは細胞の核内分子の修飾具合が後天的な環境によって変り、遺伝子の発現様式が異なるからなのですね。ちなみに修飾が異常に変わってしまったのが細胞のガン化です。

<リプログラミングの障害>
父方と母方からの遺伝子によってプログラムされて決められたように生きているのではない私、という生物は、ではいつリプログラミングされ、また何がクリテイカルなのでしょうか。

DNAやヒストンの修飾に異状が生じ遺伝子の発現制御が乱れて発達障害となるインプリンテイング病がいくつか分かってきました(参考)。

遺伝子修飾によるリプログラミングで外界にとりわけセンシテイヴな時期は配偶子形成と受精卵着床前の卵割期とのことです(図、左下)。

各種の修飾酵素がきちんと働くためには細胞の状態、環境が重要となります。女性の卵は母親のお腹の中での胎児期に既に分化していきますから生まれる子にとっては祖母の身体状況が重要ということになりましょうか。また、悲しいことに受精が成功して着床する時期は女性が予知したり認識できたりすることはほとんどありません。ということは日頃の栄養状態や生活習慣が大切ということになりますね。薬、タバコ、お酒、放射線、ダイエット、睡眠不足、などでしょうか。。。。

メデイアでは医学の進歩?とばかりに著名人の生殖補助医療(対外受精や顕微授精)のニュースを報じます。その医療ではもっとも重要な胚細胞分割の初期にシャーレ内でいろいろな薬物を入れて人間が実験操作をするために修飾の機構を大きく乱して疾患を導くと報告されています(参考)。


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    Posted by 丸山 悦子  at 18:24│Comments(0)長寿健康社会
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