たまりば

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2011年06月12日

たばこの煙

<ニコチンが怖い理由>
煙草はひとたびその味を覚えると、もう生涯、手放すことができなくなる、とか(私は吸ったことがないのでどうもリアルではありませんがーー)。

しかしいくら快感の世界に浸りたくても弊害が多いので、ひとの前では吸えませんね。

たばこの煙例えば受動喫煙による影響は特に小児・胎児には著しい害となります。そして日に一箱も吸う人と一緒に生活すると年間10回の胸部レントゲン(~mSv)を受けたと同じ、放射性鉛やポロニウム(図の上)の放射線を浴びるようです。

もちろん本人には、たばこの葉由来のニコチンや放射性物質、そして添加成分が発ガン因子となるのみならず、口腔内では歯肉の血行不良、歯周病を誘引し、あげくは免疫不全や骨粗しょう症、脳萎縮と多くの疾患の危険因子となることが分かっています。

ちなみに、日に20本吸うと年間300回の胸部X線と同じ内部被爆量となる、と報告されています(文献 )。

ニコチンはコカイン、モルフィネとともに植物アルカロイドという麻薬で劇・毒物です。
それらには耽溺性(強迫的な乱用と再発に推移していく精神的・身体的依存性)があるため止められなくなるのです。

いったい、そのメカニズムはどのようなものでしょうか。

<快感を増幅する神経伝達物質>

肺から吸収されたニコチンが中脳腹側被蓋野ニューロンに存在するニコチン受容体(ニコチン性アセチルコリン受容体)や側坐核(図)などにある前シナプス膜のその受容体(図、中央)に結合すると神経細胞末端から、興奮性神経伝達物質であるドパミンが過剰放出します。
すると満足感などの快感がおきるのです。

そこは、中脳の腹側被蓋野から視床下部(辺縁系)の側坐核、さらに前頭葉にいたる、ドパミンなどを神経伝達物質としている神経細胞からなる、快感の脳内報酬神経系に位置するからです。

したがって、やめられない、やめられない の元凶はその快感神経系のドーパミンという快楽物質のせいと解釈されます、がドパミンのレベルがどのようにこの神経回路内で調節を受けるのか詳細は未知です。

このシステムの制御は神経細胞間の興奮伝達と神経細胞内の情報伝達のレベルで行われると考えられます。

ドパミンD2受容体の高親和性型におけるレベルの増大がニコチンの高感受性に関与するという報告がされています(参考)。

最近、脳切片において喫煙時のニコチン濃度を用いて実験をし、前シナプスでグルタミン酸の放出があることが見つかりました(参考)。

依存性解除の治療法開発のために、グルタミン酸神経系などが関与する分子レベルの解明が待たれます。 

<千変万化のニコチン受容体>
数年に一度はおしゃべりを楽しむヘビースモーカーの友人がいます。

ある時「ニコチンって頭が良くなるの?」と、ニコチンの害しか知らない私でしたが思わず尋ねてしまいました。

というのは私には彼女の脳が、透きとおって見え、神経のシナプスが増えているというよりはゴミ・チリ類がなくなっているように感じたからでした。

彼女は「頭は良くならないけどニコチンが皮膚に沈着してまっ茶色ョ!」と言って腕を捲って見せました。

豈図らんや、やはりニコチンは認知力を高める、ようです。

ニコチンのポジテイヴ効果として認知力の増大や神経疾患の治療への利用について報告がなされています(参考)。

ニコチン受容体は種々のサブユニットからなるイオンチャネルで、脳内には多種類知られ、分布も広範囲です。それだけ機能も多様性が推察され、記憶学習をはじめとする様々な生理機能に密接に関わっていると考えられています。

そう言えば一昨日の新聞に、煙草のニコチンが肥満を防ぐという研究結果が雑誌サイエンスに掲載された、とありました。視床下部の自律神経系に関与する神経細胞のニコチン受容体がニコチンで刺激されて食欲減退を導くのです(文献)。

<脳内の指南はーー>
前頭葉(脳の図)は、ヒトが人たる思考、判断に基づいた社会行動、創造性、意志の力を醸し出します。

いっぽう、食欲、性欲のような本能的行動や快・不快、喜怒哀楽のような心の働きは大脳の中でも系統発生的に古い領域(図の海馬、扁桃体、側座核などの視床下部、脳幹周囲)が関与します。

両者の連絡が密に保たれてこそ「自分」があることになりますね。

達成や成功の積み重ねが快感の回路をいっそう磨くとも言われます。

たばこの煙自己努力によって視床下部から前頭葉への経路を賦活し、煙草のニコチンに依らずに、精神の座とも言うべき大脳を充分に輝かせたいものです。。。



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    Posted by 丸山 悦子  at 20:39│Comments(3)脳神経生化学
    この記事へのコメント
    こんばんは。
    私は煙草が嫌いですが、好きな人はやめるのが難しいみたいですね。
    ためになるので参考にさせていただきますね。
    Posted by かずみ at 2011年06月16日 00:03
    かずみ さま

    ご訪問有り難うございます。

    やめることの難しさ、の解決に脳化学の発展が必要と思っています。

    ためになる、なりそう?な知識は本やネットで溢れているものの役立つ生活情報にする自分というものがいかんとも難題ですね。

    また、目にしたその解析方法、数値など、どう意味があるのか、ないのかーー探る続けることは現代人の課題でしょうか。

    今後とも宜しくお願い致します。
    Posted by まるやま at 2011年06月16日 08:56
     イイですね~、座布団ヒラメ。うらやましいです…。
    それにしても「有終の美」飾れて良かったですね!!!
    お正月休み、高知でも行けばよかったでしょうかね?!
    Posted by ーパーコピー時計 at 2013年07月16日 10:40
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      コメント(3)